嬉野市塩田町の「八天神社」は、火の神様を祀(まつ)っている。火災を防ぐ、つまり「火伏(ひぶ)せ」の神様である。ここには、明治15年に鹿島の人たちが奉納した消防の絵馬が掛かっている。当時の新春出初め式が描かれているものだ◆今でも消防団員の信仰を集め、一帯の陶芸家も尊ぶ。泥で作った器が、窯の中の炎をくぐり抜けると肌が玉(ぎょく)のように化ける。陶工は、いにしえより炎に神の恩恵を感じていたことだろう。「火はすべてを焼き尽くす恐ろしさがある一方、世の中に役立つというプラスの面も持つ」と田村良典宮司◆人類が火を使い出したのは古い。『火の神話学』(大塚信一著)によると、明らかに証拠があるのは、約40万年前に出現したネアンデルタール人になってからだそうだ。太古から始まった火の歴史。現代においては、科学の力を借りた「原子の火」もある◆止まっていた玄海原発3号機が、7年3カ月ぶりに再稼働した。新しい規制基準が「世界最高水準」であっても、絶対の安全が確保されるわけではない。「想定外」はいつでも起こりうる◆福島の原発事故が、一面では「人災」でもあったように、人間が全てをわがものとして操れると思った時、そこに生まれる「おごり」に危うさが忍び込む。人間は核の火を甘くみてはいけない。ゆめゆめ忘れてはならぬことである。(章)

このエントリーをはてなブックマークに追加