選抜高校野球が23日開幕する。今回は90回の記念大会だ。夏に待ち受ける全国高校野球選手権の方は、100回大会を祝う。

 今年から高校野球は選抜大会も選手権大会も「延長引き分け、再試合」となるのを防ぐため、タイブレーク制度を導入する。選手の健康、とりわけ投手の肩と肘の故障を未然に防ぐには、さらにどのような方策が考えられるか。今大会をきっかけに議論が深まることを期待したい。

 タイブレーク制は既に、明治神宮大会と国体の高校野球では採用されている。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)をはじめ、この方式を導入している国際大会は多い。

 延長戦がどこまでも続くのはテレビ中継上、また大会日程変更の恐れがある点で、主催者にとって都合が良くない。昨年の選抜大会は2回戦の2試合が続けて延長十五回引き分けとなり、その2日後に再試合を行う異例の対応となった。

 それもあって、主催者の日本高野連はタイブレーク導入の検討を加速し今回、実現にこぎ着けた。延長十二回が終了して同点の場合、十三回は無死一、二塁の状況から攻撃を始める。人為的に得点しやすくする。

 投手の肩と肘のけがを防ぐには、これだけでは足りない。投球数に上限を設け、さらに次に登板するまで一定の休養日があるのが望ましいと、多くの医師と専門家は指摘する。実際、WBCはそのようにしている。

 高野連はまだ、そこまで踏み込めないという。そのような規制は部員数が少なく、複数の投手を用意できない学校と、部員が多い、いわゆる強豪校との戦力格差拡大につながりかねないと説明する。

 しかし、だからといって、全国約4千校の大多数の小規模チームで活動する投手を、いつまでも故障の危険にさらして良いはずはない。強豪校でも、エースと2、3番手の投手の実力に開きがあり、1人のエースに頼る戦い方を選択する指導者が多いのが現状だ。

 投球数制限と連投の禁止をしっかりルール化すれば、小規模チームは多くの選手が野手と投手を兼務するようになり、大規模チームは今以上に複数の投手の育成に乗り出すはずだ。いずれも、投手の肩と肘の酷使、疲労を未然に防ぐ効果が期待できる。

 甲子園大会は長い歴史の中で、全国のファンに親しまれ、ドラマが生まれ、それが感動を呼び、野球少年を勇気づけてきた。数々の栄光に彩られてきたスポーツ文化であることは間違いない。

 しかし、その陰で多くのエース投手が健康や将来の夢と引き換えに、行き過ぎた奮闘を続けてきた。150球を超える完投や連投がたたえられ、顧みられることはまずない。

 今、世界に目を向ければ、アスリートの健康保護を第一に考えるべきだとの考えが、国際オリンピック委員会(IOC)や各国際競技連盟、プロスポーツのリーグで広まっている。中でも若年層の選手の健康を守ることは、スポーツの将来の発展を約束するとの認識が共有されるようになった。

 高野連はタイブレーク制が投手の故障の予防には限定的な効果しかないと認めている。節目を迎える今年こそ、健康問題に真正面から向き合ってほしい。(共同通信・竹内浩)

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