玄海原発差し止め仮処分を退ける決定を受け「不当決定」と書かれた紙を広げる原告側=20日午前10時ごろ、佐賀市の佐賀地方裁判所

 司法に託した一筋の望みは一転、失望に変わった。九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働を巡り、佐賀など九州・山口5県の住民73人が佐賀地裁に申し立てた運転差し止めの仮処分申請。火山噴火のリスクや避難計画の実効性への疑問など、訴えはことごとく退けられた。「また見捨てられた」。昨年6月に続く「却下」の判断に、住民の目には落胆と不信の色がにじんだ。 

 20日午前10時すぎ。「不当決定」。地裁前で女性弁護士が固い表情で申請却下を知らせる垂れ幕を掲げると、詰めかけた住民ら約80人からため息が漏れた。

 玄海原発を巡っては昨年6月、別の市民団体の住民による再稼働差し止めの仮処分申請が退けられた。一方で12月には広島高裁が、阿蘇カルデラの危険性を理由に四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の運転差し止めの仮処分を決定。今回申し立てた住民には、阿蘇からの距離が伊方原発と同程度にある玄海原発に関しても、同様の判断が出るのではという期待感があった。

 「流れはこちらに来ていると思っていた。今回の決定は国や事業者に寄り添っており、裁判官の忖度(そんたく)にも映る」。伊万里市の藤井亮輔さん(56)は不信感を隠さない。唐津市の主婦片山裕子さん(62)も「住民の命を守るための司法ではなかったのか」と語気を強めた。

 原発から30キロ圏の福岡県糸島市の岡部寛喜さん(80)は「事故が起きたら自然が壊され、生活もできなくなる。事故がなくても核のごみが出続ける」と不安を言い募った。

 県弁護士会館で開かれた報告集会では、福島県いわき市から鳥栖市に避難した金本友孝さん(57)が「また見捨てられたという気持ちになり、涙が出た。今度はうれし涙を流させて」と、抗告による上級審での審理に望みをつないだ。

 23日にも3号機が再稼働するが、九州玄海訴訟原告団の長谷川照団長は「悲観はしていない。われわれが進んでいる道の過程にすぎない」と折れずに進む考えを示した。(取材班)

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