中国の全国人民代表大会(全人代=国会)は16日間の会期を終えて閉幕した。会議では習近平国家主席が再選されたほか、習氏の腹心、王岐山氏が副主席に選出され、2期目習政権を担う国・政府の陣容が決まった。

 憲法改正により、習氏の名前を冠した「新時代の中国の特色ある社会主義思想」が国の指導理念となり、国家主席、副主席の3選禁止規定が撤廃された。

 習氏の1強体制は盤石となり、5年後の3選、そして終身支配も視野に入れた。しかし、長期の強権政治は、内政の混乱や外交の暴走を招く危険性をはらむ。強権大国の今後の動向をしっかりと注視したい。

 習氏は閉幕式の演説で「社会主義近代化」と「中華民族の偉大な復興」という「中国の夢」を目標に掲げ、国民のナショナリズムを鼓舞し「共産党の指導」の下で国づくりに励むよう訴えた。

 1期目の習政権が強力に推進してきた反腐敗闘争について、国民の評価は総じて高い。だが、情け容赦ない汚職摘発への反発に加え、一部には恣意(しい)的に政敵を排除しているとの批判もある。

 党中央規律検査委員会書記として反腐敗闘争を取り仕切った王氏は、68歳定年制により、昨年の党大会で党務から退いたが、異例の人事により、副主席として習氏を補佐することになった。習―王ペアの継続は、不満分子からの反撃リスクへの対処とも読める。

 また習氏は「総合的な国家安全観」の重要性を強調し、人権派弁護士の大量拘束や、インターネット上での言論統制、思想教育の強化など政治的引き締めを強めてきた。

 開明的な知識人は習氏の強権の長期化に反発する。貧富の差の拡大や環境汚染への庶民の不満も根強い。豪腕で封じ込められた不満の圧力がたまり、いずれ爆発して社会不安を招く恐れもある。

 習氏は演説で「世界一流の軍隊づくり」を目標に掲げ、改めて強軍路線を示した。2018年度予算には前年度比8・1%増の約1兆1千億元(約18兆3千億円)の国防費が計上された。経済成長の伸びを上回り、日本の防衛費の約3・5倍となった。

 習政権はフィリピンやベトナムなどと領有権を争う南シナ海の軍事拠点化を着々と進め、「航行の自由」を主張して周辺海域に軍艦を航行させる米国と対立を続ける。

 個人独裁色を強める習氏が今後、国民や軍部のナショナリズムに呼応したり、内政の失敗から国民の目をそらしたりするため、対外的に強硬化する懸念もある。

 習氏は「人類運命共同体」の構築、現代版シルクロード構想「一帯一路」の展開を提唱するが、「強国」と「共生」の整合性が取れず、国際社会の支持を得にくい。

 加えて、習氏の支配が長期化する可能性が強まり、共生路線の説得力は弱まった。国内で政治の民主化に背を向け、独裁体制を敷く国が国際社会では他国を尊重して民主的に振る舞うとは考えにくいからだ。

 今年は日中平和友好条約締結40周年。安倍晋三首相は中国に関係修復を呼び掛け、中国側も前向き姿勢を示す。5月には日本で日中韓首脳会談が開催される見通しとなった。日本は関係改善を進める過程で、中国に政治の民主化、平和的な外交・安保政策を率直に促していくべきだ。(共同通信・森保裕)

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