使用済み燃料ピット内をクレーンにつるされ移動する燃料集合体(中央)=2月19日、玄海原発燃料取扱建屋内

 透き通った青い水の中、クレーンでつるされた燃料が慎重に原子炉に差し込まれた。2月19日、報道陣に公開された核燃料の装塡(そうてん)作業。原子炉格納容器内では約30人が、クレーンを操縦したり、既に入っている他の燃料と接触しないよう目視で確認したりしていた。「3号機の原子炉に燃料が入るのは5年ぶりです」。九電担当者の言葉には、再稼働に向けた力強さがあった。

 原発を動かす核燃料は、燃料棒264本が束になった「燃料集合体」で、高さ約4メートル、重さ約670キロある。九電は2月20日には193体の燃料装塡を終え、検査を経て3月23日の再稼働へ向け大詰めだ。

 「3号機の再稼働は核燃料サイクルにとっても大きな意味がある」。そう話すのは玄海町の岸本英雄町長。発言の背景には先行きの見えない日本の核燃料サイクルがある。国は当初、プルトニウムを生み出す高速増殖炉をサイクルの軸に据えていたが、もんじゅ(福井県)の廃炉が決まり頓挫。国内のプルトニウム消費をプルサーマル発電に頼るしかない現状がある。

 ただ、玄海3号機が再稼働してもプルサーマル発電を行う原発は4基にすぎない。プルトニウム消費量はわずかで、国内にたまる核兵器数千発分の約50トンをどうやって処理するかは不透明なまま。加工が難しいウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の製造は国外に頼っており、価格は約20年前から5倍に高騰し、コストも膨らんでいる。

 行き先が見えないのはプルトニウムだけではない。3、4号機が再稼働すれば、使用済み核燃料と使用済みMOX燃料が出る。使用済み燃料は日本原燃の原子燃料サイクル施設(青森県六ケ所村)へ送り、再処理、MOX燃料に加工する計画だが、肝心の施設がまだ動いていない。国は使用済みのMOX燃料も再処理する方針だが、こちらは再処理する工場さえない。

 再処理の過程で出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場は、昨年7月に国が適地マップを公表。設置場所選定に動き出したが、地元との意見交換会で学生アルバイトの動員が発覚し反発がくすぶる。

 玄海が再稼働すれば、使用済み燃料プールは3号機が約7年、4号機が約5年で満杯となる。九電は燃料の間隔を詰めて保管スペースを増やす「リラッキング」や、特殊な金属容器に入れて空冷する乾式貯蔵施設建設を検討しているが、具体的な時期は未定だ。

 「原子力資料情報室」(東京都)の共同代表を務める伴英幸氏(66)は「日本では原発の運転と、使用済み核燃料や廃棄物の処理問題は切り離して考えられてきた。出口対策を放置したまま再稼働するのは無責任」と批判。その上で「このままでは、廃棄物や燃料が行き場をなくし、原発を止めざるを得なくなるだろう」と指摘する。

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