1966年に出版された作家、堀田善衞(ほった・よしえ)の『キューバ紀行』(岩波新書)。その名の通り堀田がつづった、カリブ海に浮かぶキューバの見聞記である◆通訳兼ガイドの一人が、24歳の日系2世、ルイス・サトウ・サトウ君。チョビひげをはやした青年の第一声は「どこさ行くかね」。なまった日本語がなんともユーモラスだ。彼のルーツがどこなのかは書いてないが、親はきっと日本の地方出身なのだろう◆今年は、日本人がキューバに定住目的で移住して120周年。第1次世界大戦が14年に勃発すると、キューバは砂糖景気に沸き、潤う島国に仕事を求め、遠く日本からも渡ってきた。今も日系人約1200人が暮らす。一昨年、キューバを取材で訪ね、日系人2人と懇談した◆熊本にルーツがある3世のフランシス・アラカワさんの祖父は、初めは農場で働くが、第2次世界大戦が始まると、当時の親米政権によって強制収容所入りを余儀なくされた。そのことは以前、この欄に書いたが、収容所に入った日系人約350人の名簿が現存する。その中に唯一の佐賀出身者で「鶴丸信市」という人の名を見つけた◆移住生活は、きっと苦難が多かったことだろう。これから現地で、120周年を記念しての関連行事が開かれるという。両国の懸け橋となった人々がいたことを知っておきたい。(章)

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