唐津赤十字病院敷地内の県緊急時医療施設にあるホールボディーカウンター。甲状腺など、内部被ばくを調べることができる=唐津市

 「佐賀県も(玄海原発の)再稼働が予定されている。県民の関心も高まる中、われわれも真剣にこの問題に取り組み、検討したい」。3月9日、佐賀市のアバンセで開かれた県内の被ばく医療体制整備に向けた検討会。検討会の委員長で、原子力災害拠点病院に指定されている県医療センター好生館の平原健司救命救急センター長が約30人の出席者に決意を示した。

従事者広がり、不安も

 2011年の福島第1原発事故では、地震などとの複合災害や、放射性物質が広範囲に拡散する事態を想定していなかったため、国内の被ばく医療体制は十分に機能しなかった。

 この教訓を踏まえ、原子力規制委員会は新たな被ばく医療体制の構築を進めている。新体制は、事故時に被ばく医療の中核を担う拠点病院を中心に、医療スタッフ派遣や汚染検査などで拠点病院を支援する複数の「原子力災害医療協力機関」で構成する。

 規制委は、高線量被ばく患者が発生する場合に備えた「高度被ばく医療支援センター」に長崎大など5施設を指定。佐賀県内で原子力災害が発生した場合は長崎大がバックアップする。昨年9月の原子力総合防災訓練でも連携を確認した。

 県は17年3月末に好生館と唐津赤十字病院を拠点病院に指定した。唐津赤十字病院の一角には、16年8月の病院移転に合わせ、県が設置した汚染対処施設がある。放射線で汚染された傷病者の除染や応急処置をする施設で、内部被ばく状況を把握するホールボディーカウンターも備える。

 唐津赤十字病院の酒井正医療社会事業部長は「昨年の訓練では、養生して、除染して、搬出まで、1人当たり2時間程度かかった。1人2~3時間ずつかかるとすると、1日で数人は可能」とする。一方で「基本的には1人ずつなので、多人数を受け入れる形にはなっていない」と大規模災害時の懸念も口にした。

 ほかにも、除染後も汚染の基準値を下回らない患者を受け入れるスペースの新設や地域の防災訓練、協力機関への研修開催など拠点病院に求められている事項は多岐にわたり、現状では未達成もある。酒井部長は「継続的に、繰り返しやって人材育成をしないといけない」とし、好生館と連携して原子力災害時のマニュアル改定にも取り組む。

 検討会は新年度早々にも協力機関の登録を始める。病院や放射線技師会といった職能組織が対象となるが、被ばく医療に従事する裾野が広がることには不安の声も上がる。

 県看護協会監事の三根哲子さん(69)=杵島郡白石町=は昨年7月、玄海原発操業停止を求める訴訟の意見陳述に立ち、医療関係者の思いを代弁した。「自分の命を守るには少しでも遠くに逃げなくてはという本能と、人の命を救う職業倫理とのジレンマに直面する。原発がなければ、不要な葛藤はしなくて済む」

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