中国の青磁(左)と青花(右)

 前回、「なぜ有田陶器市は、ほとんど磁器ばかりなのに、陶器市という名なのか?」みたいな、やきものの分類の謎についてちょっと触れてみた。江戸時代までの日本に磁器という区分はなく、磁器も陶器の一種。そのため、明治にはじまる陶器市も、そのなごりで磁器市ではないのである。今回も、その続きのような話を少し。

 かの広辞苑で「磁器」の項目をめくると、「素地がよく焼き締ってガラス化し、吸水性のない純白透明性の焼物」とされている。つまり、磁器質だから磁器。至極明解である。これが、現代の日本人がイメージする、ごく一般的な磁器の概念だと思えば、当たらずしも遠からずというところか。

 ところが、中国や韓国をはじめ東洋のやきものでは、磁器質でない磁器も、さして珍しいわけではない。別に権威のある辞典にあらがうつもりはないが、これが現実。たとえば、名品も多く知られる中国の古い唐代の白磁や宋代の青磁などは、磁器質ではなく炻器質である。象嵌技法に優れる朝鮮半島の高麗青磁も、またしかり。

 実は、本来、磁器質であること自体は、磁器の必須要件ではない。これは14世紀初頭ごろの元代に、中国の景徳鎮で開発された「青花」、つまり、日本でいう染付磁器の胎質を基準としたもので、日本で磁器がはじまった頃には、すでに青花のような磁器が、一般的になっていたからなのである。 (有田町教育委員会学芸員・村上伸之)

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