言葉にできない感情や、持てあましてしまう気持ちに、どう向き合えばいいのか―。創作の力で心を解放する「アート・セラピー(芸術療法)」という手法がある◆昭和40年代から芸術療法を取り入れている友朋会・嬉野温泉病院が開いた市民向けワークショップに先日、飛び入りさせてもらった。陶芸コースを指導する芸術療法士、森啓訓(ひろくに)さん(47)から「集中して、努力して、達成感を味わう。そうやって、自己治癒力を引き出すんですよ」と説明を受け、湯飲み作りに挑戦した◆ひんやりと冷たい粘土をこねていると、それだけで時間がたつのを忘れる。同じテーブルの参加者とも、なんとなく心の距離が縮まり、「展覧会に出そうかな」などの冗談に笑った。地域住民を中心に、佐賀、長崎両県の学生ら100人近くが参加していた◆陶芸のほか、絵画、連句、音楽、クラフト、コラージュの各コースがあり、それぞれの効果は異なる。例えば、陶芸は心を静め、歌やダンスなら心を満たして「カタルシス」、つまり、もやもやする気持ちをはき出すような効果を期待できる◆「安心して自己表現できる場」「何を表現しても受容されるという体験」が、自分自身を取り戻してくれる。心のバランスをどう保つか。ストレス社会に暮らす現代人にとっても、生きるヒントになると思えた。(史)

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