玄海町が西九州自動車道北波多インターチェンジ(IC)へのアクセス道路として整備を進める町道「長倉―藤平線」。藤ノ平ダムに架かる橋の建設工事が続いている=東松浦郡玄海町

 3月上旬、東松浦郡玄海町役場から南東へ向かう道路を進むと、赤字で大きく「全面通行止」「まわり道」と書かれた看板が立っていた。町が西九州自動車道北波多インターチェンジ(IC)へのアクセス道路として整備を進める町道「長倉―藤平線」。町役場近くから唐津市との境まで1・9キロの区間で、2010年度の調査設計から8年がたつ。現在は「藤ノ平ダム」に架かる橋の工事中で、完成は1年後の見通しだ。

 

生活道改良求める声も

 事故時の避難路を想定、玄海原発のプルサーマル導入に伴う核燃料サイクル交付金などを財源に、総額35億円をかける。

 ただ、「町外の道路は整備できない」(町まちづくり課)ため、唐津市内は県が県道「肥前呼子線」として唐津市竹木場地区まで約5・5キロを整備している。14年度から事業化し、18年度までの事業費は13億2千万円。国が全額を補助する原発等立地地域特別交付金を充てているが、「全体の事業費や事業完了年度は見通せていない」と県道路課。

 町民からは幹線道路だけでなく、生活道路の改良こそ必要との声も上がる。玄海原発から約6キロの有浦下地区に暮らす農業青木一さん(80)は「10年以上前から道路拡張を町に言っているが、何一つ手をつけていない」と憤る。

 災害時、原発から5~30キロ圏の住民は町などの知らせを受けて公民館に集合、バスで移動することになっている。青木さんは「道が狭く大型自動車が通ると離合もできない状態。バスが来るかも分からないし、『ここに集合するよりも、わが車で逃げるばい』という人もいる」と懸念する。

 県は14年、重大事故時の避難時間予測で、県内の30キロ圏内住民約19万人が一斉に避難し、30キロ圏外に逃げるまで最長で30時間30分かかると推計した。

 避難計画の実効性に疑問符が付く中、国は16年度から、地域防災計画に位置付けた避難経路の具体化・充実化を目的とした補助金事業を始めた。県も活用し、昨年10月、避難渋滞改善に向けた調査に着手した。渋滞が予想された5カ所を抽出、迂回(うかい)路設定や信号機の制御を行った場合の改善効果をシミュレーションする。結果公表は新年度以降になる見込みで、今回の再稼働時には間に合わない。

 全国の原発避難計画をチェックし、新潟県の避難検証委員会委員を務める上岡直見氏(交通工学)は「机上でいくらシミュレーションしても、実際に動くための道路はここ数年で大きく変わっていない。一斉避難に対応できる道路整備が完了するのは、非常に遠い先の話」と指摘する。「そのような状況で再稼働に同意した県の姿勢も問われるだろう」。

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