自民党の憲法改正論議が、改憲案の条文化に向けて大詰めの段階に入っている。党の改憲推進本部は、焦点の9条について条文案の意見集約を図り、25日の党大会で、緊急事態条項の新設、参院選「合区」解消、教育の無償化・充実強化と併せて、計4項目の改憲案の方向性を示す方針だ。

 党の改憲論議は、安倍晋三首相が昨年5月に2020年までの改正憲法の施行を目指すと表明したのを受けて始まった。

 しかし安倍政権は森友学園問題を巡り、国民の代表である国会に改ざんした行政文書を提出するという、国民主権を侵害する過ちを犯している。

 この政権に、国の基本的原理を定める憲法の改正論議を主導する資格があるだろうか。政権が今、取り組むべきなのは真相の徹底解明による政治不信の解消である。

 森友学園問題のため、国会の憲法審査会は開催日程の各党協議にすら入れない状態にある。安倍首相は「憲法審査会の静かな環境の下で議論を深めてもらいたい」としばしば強調してきたが、今の政治状況は「静かな環境」とは程遠い。

 与党である公明党の北側一雄憲法調査会長は「憲法審査会の場に改正原案が出て来る段階には至っていない」と、自民党の動きには同調しない考えを表明。改憲を主張する日本維新の会の馬場伸幸幹事長も「混乱した中で議論すれば、感情的な判断が優先される懸念がある」と指摘した。当然の対応だろう。議論は仕切り直すべきだ。

 自民党が改憲を検討している4項目は、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という現行憲法が掲げる「基本原理」に深く関わるものだ。

 安倍首相は「憲法の基本原理は堅持する」と述べている。だが本当にそうだろうか。自民党が意見集約している条文案には疑問点が多い。

 9条の改正案について、党改憲推進本部の細田博之本部長は全体会合で7案を提示。その中で、戦争放棄を定めた1項とともに、戦力の不保持を規定した2項も維持した上で「必要最小限度の実力組織としての自衛隊」を明記する案を軸に意見集約を図る構えだという。安倍首相が昨年5月に表明した、9条には手を付けず自衛隊を憲法に書き込む「加憲案」に沿った内容だ。

 これに対して石破茂元幹事長らは現在の2項を削除して「陸海空自衛隊の保持」を明記する案を主張している。

 安倍首相は加憲案でも「自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」としている。しかし線引きの曖昧な「必要最小限度」という文言に基づいて自衛隊を明記すれば、その活動や装備が拡大し、2項は事実上空文化する恐れがある。

 大規模災害に対応する緊急事態条項では、政府に法律と同じ効力を持つ政令の制定の権限を認める規定を盛り込む方向だ。緊急事態を理由に、人権が制約される場合が生じると指摘される。

 参院選の「合区」解消と教育無償化の2項目では、既に条文案が固まっている。選挙の区割りや定数配分について、人口だけでなく地域の一体性なども勘案材料とする「合区」解消案は「1票の価値」の平等との整合性が問われる。教育無償化でも、教育を受ける権利への慎重な配慮が求められる。政治が混乱している現状での拙速な集約は慎むべきだ。(共同通信・川上高志)

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