代替緊急時対策所を視察する原子力規制委の更田豊志委員長(中央)ら=2月11日、東松浦郡玄海町の玄海原発

 再稼働へ向けた検査が進む玄海原発(東松浦郡玄海町)に2月23日、原子力規制委員会の山中伸介委員の姿があった。安全対策で整備するテロ対策施設の建設予定地の調査で、防犯上の理由でその様子は非公開だった。調査を終えた山中委員は報道陣に「これまでの安全対策施設のバックアップ施設。この施設を造ることで原発の安全性はさらに向上する」と強調した。

■高まる緊張、重要性増す

 特定重大事故等対処施設(特重施設)と呼ばれる施設。航空機衝突といったテロ攻撃を受けて原子炉施設が壊された場合でも、炉心の冷却を維持し放射性物質の大量放出を防ぐため、中央制御室の代替となる緊急時制御室や専用発電機を備える。原子炉建屋との同時被災を避けるため100メートル以上離す計画だ。

 設置を巡っては当初から猶予期間が設けられ、規制委は設置期限を一律に2018年7月としていた。ところが、審査の長期化などで間に合わない事業者が多く出そうなことから15年11月に「審査合格から5年」と修正した。玄海3号機は22年8月、4号機は同9月が期限となる。

 北朝鮮の核・ミサイル開発など日本を取り巻く安全保障環境が緊張感を増す中、特重施設の重要性は高まり、再稼働が先行することに不安の声も根強い。

 東京電力福島第1原発の事故では、主に地震によって外部からの送電が遮断され、巨大な津波による浸水で非常用ディーゼル発電機やバッテリーが機能しなくなった。この「全電源喪失」により冷却機能も使えなくなり、核燃料の温度が上昇し続け、炉心溶融(メルトダウン)や水素爆発につながった。

 これらの教訓を踏まえた新規制基準への適合のため、九州電力は耐震補強や、建屋への浸水を防止する水密扉を設置、冷却手段や電源を多様化するため、可搬式の電源設備やポンプを配備した。水素爆発を防ぐために水素除去装置を取り付け、重大事故時に現地対策本部となる耐震性の緊急時対策所を建設、放射性物質が放出された場合に備え水中カーテンも備えた。

 先に稼働した川内原発(鹿児島県)と玄海原発の安全対策費は合わせて約9千億円に上る。ただ、規制委や九電は「安全性の向上に終わりはない」と繰り返し、今後も安全強化への投資は続く。

 政府は新規制基準を「世界で最も厳しい」とアピールし、規制委の審査に合格して地元同意を得られれば、再稼働させている。

 元原子炉格納容器設計者の後藤政志氏は「水蒸気爆発や航空機落下など起こる可能性を否定できない現象を無視、軽視している。国家的なロシアンルーレットをやっているのと同じ」とさまざまなリスクが置き去りにされたまま、再稼働が進む現状に警鐘を鳴らす。(大橋諒、藤本拓希)

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