規制委の更田豊志委員長(右)と玄海原発について意見交換した山口祥義知事(中央)や岸本英雄玄海町長ら=2月11日、唐津市の県オフサイトセンター

 3月5日の佐賀県議会一般質問。共産議員が玄海原発(東松浦郡玄海町)の安全対策について説明する九州電力のリーフレットを取り上げた。書面に事故発生時の放射性物質放出量が「福島第一原子力発電所事故時の約2000分の1の『4・5テラベクレル(1基あたり)』」と明記されていることに触れ、「東京電力も放射線放出量を把握していない。安全神話を振りまくものだ」と断じた。

■ちらつく「新たな神話」の影

 「2000分の1」という数字は2016年12月の第1回県原子力安全専門部会でも登場している。「(専門部会の)資料に『福島の2000分の1』って書いていないじゃないかと(担当者に)指摘したら、『口頭で説明します』と話していた」。部会翌日、九電の瓜生道明社長は佐賀新聞の取材に言及していた。

 社長肝いりとも言える数字は、玄海3、4号機が新規制基準に合格した昨年1月以降、リーフレットで玄海町と周辺の唐津市肥前町、呼子町、鎮西町の全約7500戸に配られた。

 先の一般質問で答弁に立った山口祥義知事は「安全神話につながるような考え方というのは、決してあってはならない」と懸念を示した。9日には担当部長が九電担当者を県庁に呼び、改善を申し入れた。その後、九電は「安全神話と受け取られるのは本意ではない」としてこのリーフレットの利用を中止した。

 「安全神話を許さない」姿勢を見せる佐賀県だが、安全性の検証は原子力規制委員会や九電に寄りかからざるを得ない実情がある。

 2月11日、玄海原発から約13キロ離れた唐津市の県オフサイトセンター。規制委の更田豊志委員長と原発30キロ圏内の自治体首長がテーブルを囲んだ。山口知事は玄海原発の稼働期間中に阿蘇カルデラ(熊本)が大噴火を起こす可能性について規制委の見解を問うた。昨年12月、広島高裁はその危険性を理由に約130キロ離れた伊方原発3号機(愛媛県)の運転差し止めを命じていたためだ。

 「審査では巨大な噴火直前のステージではないと確認している。運転期間中にこのような巨大噴火が起きる可能性は、十分に低い」と更田委員長。知事も規制委の“お墨付き”に納得した表情を見せた。

 昨年4月に山口知事が再稼働同意後、原子力行政には逆風が続く。6月、日本原子力研究開発機構大洗研究開発センター(茨城県)で作業員5人の内部被ばく事故が発生。10月以降、神戸製鋼所や三菱マテリアルのデータ改ざんなどの不正が発覚、11月には原子力発電環境整備機構(NUMO)主催の最終処分場説明会で、受託企業が金銭を払って学生らを動員していたことも明るみになった。

 疑念が高まる一方で、佐賀県は設置した原子力安全専門部会を、再稼働同意以降は開いていない。原発回帰路線の根底には、新たな「安全神話」の影がちらついている。

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 福島第1原発事故から7年目の春に、玄海原発3号機が再稼働する。「事故はあの数日間ではなくて、7年間、さらにこれからも続く」と規制委が指摘する中、福島の教訓が生かされているのか、現状を探った。

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