佐賀のアートなスポットを巡る旅の第1弾は、県南西部。5月オープン予定の芸術家滞在型ゲストハウス、目を奪う細密な絵付けを施した陶器が並ぶギャラリーとカフェ、現代アートと日本酒が出合う「角打ち」、3カ所のアートスポットを取材班が巡った。アーティスト松尾405さんとしても活躍する佐賀新聞の松尾容子デザイナー率いる取材班が訪問した、アートな心を刺激する場所を紹介する。

気が遠くなるほど緻密な図柄に心奪われ、思わず頬が緩む

YUKI HAYAMA STUDIO GALLERY&cafe516

<食> 超絶技巧の細密画にめまい

 山道を進み視界が開けると、高台に横たわる優美な建物が現れる。武雄市山内町の「YUKI HAYAMA STUDIO GALLERY&cafe516」は、細密な絵付けで知られる陶芸家葉山有樹さん(57)の工房、ギャラリー、カフェを併設する。

 約80種類の花々を閉じ込めた花器、隙間なくオリエンタルな柄を敷き詰めた水差しなど、技巧を凝らした作品が並ぶ。細密な絵柄を施した作品群に、圧倒され言葉を失う。自身も細密なペン画を制作する松尾デザイナーも目を輝かせて作品に見入っていた。

 カフェは目の前に180度広がる山々を眺めながら、香り高いコーヒーを楽しめる。豆類や野菜をたっぷり煮込んだミネストローネとバケットにサラダと果物、飲み物が付いたランチなどもある。

 繊細な筆遣いにため息がもれる職人の仕事を目の当たりにできる工房は、状況次第で見学可能だ。

 妻の智加子さん(58)は「職人はひたすら作品と向き合う孤独な仕事。気軽に立ち寄って作品を見てもらえたら、何より励みになる」と笑顔を見せた。

 
パンの器にクラムチャウダーがぎっしり。野菜たっぷりで体に優しいランチ
 
約800種の花々が隙間なく描き込まれた葉山さんの作品

 

HAMASHUKU KURABITO

<飲> 現代アートと日本酒を味わう

3種の「鍋島」を前に、この笑顔! 飲み比べると、違いが如実にわかるという=鹿島市のHAMASHUKU KURABITO

 夕暮れの鹿島市まで足を伸ばし、酒蔵通りにやってきた。現代アートで世界に羽ばたく美術家川崎泰史さん(34)が蔵人をしながら営む「HAMASHUKU KURABITO」は、スタジオと角打ちが同居するスペースだ。

 川崎さんの作品は「自画像」「生と死」「時事問題」などをテーマにした、愛らしい中にどこかトゲがある立体。作品がある空間を抜けると、温かな明かりがともる角打ちがある。

 角打ちには常時4~7種類の日本酒「鍋島」を置いているという。西麻希元記者は特別純米酒や純米吟醸3種を飲み比べた。出荷されたばかりの鍋島「純米吟醸 雄町」は濃厚な香りと味わいが喉を滑っていく。

 川崎さんは2015年10月から、鹿島で酒作りと作家活動を両立する。スタジオ兼角打ちを開いたことで間口が広がり、「知人の数も随分増えた」と話す。川崎さんの「商品は欲望を満たし、作品は欲望を超える」という話に感銘を受けたという松尾デザイナー。作品に囲まれて日本酒の杯を傾けながら、美術家とそんなことも語り合える場所だ。

 
作品とともに、川崎さんが丹精込めて育てたグリーンも楽しめる角打ちスペース
 
川崎さんの作品に現れる生物は、まぶたが半分下りているのが特徴

 

Share Creative & Bed “adonoan”

<泊> ゲストハウスで創作に没頭

野田さんにカメラの操作を教わりプロの機材を借りて写真を撮ると、驚きの仕上がりに!

 武雄市武内町に5月初旬、ゲストハウス「Share Creative&Bed“adonoan(アドノアン)”」がオープンする。写真家野田尚之さん(52)と妻のデザイナーひとみさん(57)が開く、クリエーターが創作に没頭できる滞在型宿だ。

 大手広告会社でフォトグラファーとして活躍してきた野田さんは、2012年に独立し、妻のひとみさんと共に同市へ帰郷した。以前は楼門近くに住んでいたが、武内町に新たな住居を得たのを機に、写真スタジオやモノづくり工房を備えたゲストハウスを始めることにした。自然に囲まれ落ち着いた環境で作品と向き合い、気分転換に武雄の温泉や窯元を巡る、「クリエーターによるクリエーターのための宿」だ。

 先日締め切ったクラウドファンディングは目標金額を145パーセント達成し、周囲からの期待と応援も感じられる。「立体や絵画に集中できる工房を整備して、星を撮影する専用の小屋も作るつもり」と野田さんの夢は広がる。「都会の刺激に疲れた時、感受性を復活させるのにベストな環境」と松尾デザイナーも太鼓判!

 

【動画】アートな旅

 
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