もう四半世紀も前になる。日米交渉の結果、牛肉・オレンジが自由化された1991年。迎え撃つ佐賀農業の現場を、担当記者として取材で走り回った◆牛肉は高級化、かんきつ産地は減反という荒療治で乗り切ろうと必死だった。「うちは高級品産地なのが強み」と肉牛農家は自信をのぞかせ、ミカン農家は「温州はオレンジと違い皮がむきやすい。糖度の高いものを作れば負けない」と語っていた◆その後の展開を見ると、消費減でミカン価格は低迷し、農家数は減った。黒毛和牛産地は何とか生き残っているが、より高値で売るため海外に打って出ている。「自由化の影響かはよく分からない。他の要因もあるし…」と関係者の口は重い◆農業は、時々の国際情勢に翻弄(ほんろう)されてきたがここにきて、環太平洋連携協定(TPP)参加11カ国が、新協定に署名した。今年中にも発効しそうで、農業大国の豪州やカナダからの安い農産物と生産者は再び張り合うことになる。米国抜きでも牛肉、豚肉、乳製品は影響を避けられそうにない◆特に品質差が少ない豚肉は不安だが、より安全でおいしいものを出荷するために、佐賀の養豚農家でも飼料に工夫したりと差異化する努力を重ねている。「それでも心配」ともらす。価格が安いことが良いことずくめではないと消費者には知っていてほしい。(章)

このエントリーをはてなブックマークに追加