7月の町長選への不出馬を表明した定例議会後、会見する岸本英雄町長=玄海町役場

 7月の東松浦郡玄海町長選で、現職の岸本英雄氏(64)が体調を理由に不出馬を決め、後任争いに事実上の号砲が鳴った。玄海原発3、4号機の再稼働後も2号機の存廃や中間貯蔵施設整備が控え、新町長の方針は今後の原子力政策も大きく左右する。原発と共存してきた町政の継続へ向け、岸本氏は「後継」の存在を示唆した。この他にも出馬を模索する動きがあり、水面下の動きが活発化しそうだ。

 8日の定例町議会一般質問。進退を問われた岸本氏は不出馬を表明し、12年間を「玄海町が自立した立派な町になるよう努力してきたつもり」と自己評価した。本会議後、近寄る複数の議員に笑顔で応対した。

 現職の不出馬で12年ぶりに町の顔が代わる。名前が挙がるのは前回町長選で岸本氏と争った元町議(62)で、後援会関係者は「準備はしている」。

 一方、岸本氏は議会後の記者会見で「私がやってきたことを分かってくれる人がいる」と後継の存在をにおわせた。以前から働き掛けていた地元出身の県職員は調整がつかずに断念していたが、もう1人は「町民の1人。役場職員ではない」という。加えて「原子力を推進する人でないと当選しない」と断言した。反原発派には現時点で表立った動きはない。

 岸本氏の任期は8月8日までで、玄海3、4号機の再稼働を見届けた上で引退する。今議会では新増設・リプレース(建て替え)を国のエネルギー基本計画へ明記するよう求める意見書が可決される見通し。町執行部と議会の二人三脚が続くかどうか、注目を集める。

■惜しむ声と厳しい評価

 佐賀県内の原発推進の旗振り役を務めてきた岸本英雄玄海町長(64)の不出馬表明。町議会や原発推進派からは惜しむ声が上がる一方、脱原発派などは在任12年間に厳しい評価を下した。

 岸本氏を長年支えた町幹部はこれまで5人の町長と仕事をしてきた。「顔の広さは圧倒的。県議会や商工会からも訪ねてきた」と振り返る。ある町議も「イレギュラーな質問でもきちんと答えが返ってきた。あれだけ行政を知ってる人はそういない。体調さえよければ」と引退を惜しんだ。

 厳しい声も上がった。「やめて当然」と言い切るのは、昨年9月に町議を引退し、原発問題で対立してきた藤浦晧さん(81)。「原発の怖さを何も分かっていない。次の町長には住民を守る人が就いてほしい」。60代男性も「ハード整備ばかりでソフトの充実がなかった。最初に言っていた企業誘致も結局できていない」と指摘する。

 玄海町同様に再稼働の可否などを判断してきた山口祥義知事は「(不出馬は)残念。原発立地町の難しさがある中、職責を果たそうと努力し、よく町民と話をしながら頑張ったと思う」と語った。原発推進で協力を得てきた九州電力は「玄海原発の運営をはじめ当社事業に対し、さまざまな場面でご指導をいただいたことに深く感謝します」とコメントした。

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