北朝鮮が韓国との関係改善を足掛かりにした緊張緩和に向け動きだした。韓国の文在寅大統領が派遣した特使団との会談で、金正恩朝鮮労働党委員長は4月末の南北首脳会談開催で合意、朝鮮半島非核化の意思や米国との対話姿勢を表明し、対話継続中の核・ミサイル実験を凍結するとの立場も打ち出した。

 北朝鮮が対話攻勢に転じた狙いを正確に読み取り、対話の流れを失速させず、非核化を目指す日米韓の政策調整を進めることが求められる。

 まず、昨年までの挑発的な対決姿勢を百八十度転換した北朝鮮の姿勢が、トランプ米政権の軍事的圧力や国際社会の制裁包囲網から脱却するために、韓国を利用するだけにとどまるのかどうかを見極めることが欠かせないだろう。

 強化される軍事的、経済的な圧力に危機感を抱き背水の陣で対話姿勢を打ち出したのか、朝鮮半島での恒久的な平和体制構築に向けたシナリオを真剣に描いているのかによって、対話の行方が左右されるためだ。核放棄を巡る北朝鮮との合意が何度も空文化されてしまった過去の失敗を繰り返してはならない。

 北朝鮮は昨年11月に強行した大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を踏まえ、「核戦力の完成」を宣言した。技術的に突き詰めれば、北朝鮮が主張するように米本土を狙える核ミサイルを保有するレベルに達しているかどうかは疑問視されている。

 しかし、今回の対話姿勢の背景には、米国に攻撃されない核抑止力を保有したとの自信が横たわっているようだ。この核抑止力を放棄させるための対話に臨むには、体制維持という譲れない課題を抱える北朝鮮との熾烈な駆け引きが予想される。

 特に、核開発の途上だった過去の合意とは異なり、核兵器を一定数保有しているとみられる現状から非核化へと動かすには、かなり長期間にわたる交渉が要求されることになる。原則を揺るがせずに、粘り強く信頼を段階的に積み上げる覚悟が必要だ。

 何よりも北朝鮮が非核化の意思を言葉ではなく行動で示さなくてはならない。今回の一連の合意内容に対する懐疑的な見方が少なくないのも、北朝鮮がこれまで振る舞ってきた言動によりもたらされた結果だ。信頼できる交渉相手にならなくてはならない。ここがスタートだ。

 昨年から何度も危機説が飛び交った朝鮮半島有事の可能性はひとまず回避された。金正恩委員長も文大統領も、有事で膨大な被害を受けるとの危機感は共に抱いているとみられる。しかし、危機回避のための一時しのぎの合意に終わらせてはならない。

 日本は北朝鮮との首脳会談に進む韓国や、対話への可能性を示す米国に比べると、存在感が薄くなりつつある。「圧力を最大限まで高める」との方針を今後も維持することが適切なのか慎重に検討する必要があろう。

 少なくとも、米韓に置き去りにされるような事態は避けなければならない。日米韓の対応に温度差を生じさせ、交渉力を高めようとする北朝鮮の思惑に振り回されぬよう常に警戒することも重要だが、米韓との対話だけに北朝鮮が集中し、日本人拉致問題が置き去りにされるようなことになれば、日本は外交的な敗者となってしまう。(共同通信・磐村和哉)

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