学校法人・森友学園への国有地売却問題で政府が野党の追及をかわし続けている。財務省近畿財務局で作成された売買契約の決裁文書が8億円余りの値引き発覚後に書き換えられ、国会議員に提示されたとされる疑惑を巡り、財務省が参院予算委員会理事会に調査状況を報告した。だが何一つ進展はなく、野党は一斉に反発を強めている。

 決裁文書の原本提示を求められた財務省は告発を受け背任容疑などで捜査中の大阪地検にあり、近畿財務局にはないと説明。麻生太郎財務相は「担当局以外の職員も関与させて全省挙げて調査を進めていきたい」と述べたが、捜査への影響を口実に時間稼ぎをしているようにしか見えない。

 朝日新聞の報道で疑惑が浮上して以来、政府も財務省も「捜査にどのような影響を与えるか予見し難い」と書き換えの有無などについて説明を拒んでいる。だが一方で財務省はこれまで音声データの内容を事実と認めたり、学園との交渉に関する新たな文書を公表したりした。今回はそれとは違うというなら、相応の説明をすべきだろう。

 過去には国会の秘密会で検察が証拠を提示した例もある。改ざんが事実なら、国会の国政調査権や国民の知る権利をないがしろにし、民主主義を根幹から揺るがす行為だ。あらゆる手を尽くし、誰もが納得する調査を早急に行う必要がある。

 国会議員に提示された決裁文書は、値引きなど学園側との交渉経緯を記し「契約締結してよろしいか」とお伺いを立てている。ところが、これには元の文書があり、そこに複数あった「特例」など特別扱いをうかがわせる文言がなくなっているとし、改ざんの疑いがあると報道は指摘した。

 これに対し、麻生氏は当初「捜査に全面的に協力するのは当然。今の段階で調査しない」と答弁。財務省も捜査への影響を理由に「答弁は控える」と繰り返した。野党が追及を強め、調査状況を報告したが、原本は大阪地検にあり、全文書を確認できないとし、決裁文書が二つあるかどうかについては「捜査に影響する」と回答を避けた。

 ただ財務省は先に近畿財務局と学園の交渉経緯を巡り、価格交渉のやりとりを収めた音声データの内容を事実と認めたほか、大学教授の情報公開請求に5件の文書を開示したり、国会に20件の文書を提出したりしたが、捜査への影響に話が及んだことは一度もない。

 確かに刑事訴訟法は裁判の前に事件の証拠を公にすることを禁じている。容疑者や被告の名誉を傷つけたり、公判に影響を及ぼしたりしないためだ。だが、この規定にはただし書きがあり「公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない」としている。国会が国政調査権に基づき証拠の提出を求め、秘密会で提示された例がある。

 古くは田中角栄元首相が逮捕されたロッキード事件で「灰色高官」リストが、最近では尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で衝突の模様を録画したビデオが提出された。そうしたことも調査のやり方の一つとして検討してみる必要があるだろう。

 麻生氏も「事実なら、ゆゆしき事態だ」と述べている。ならば、野党が求める前理財局長の佐川宣寿・国税庁長官の国会招致も含め、事実関係の解明に向け、やれることはすべてやるべきだ。

(共同通信・堤秀司)

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