鳥栖市の橋本康志市長は築49年が経過し耐震性が不十分な市庁舎を建て替えると表明した。4月の熊本地震以降も全国で頻発する地震を受けて防災拠点となる市庁舎の建て替えを急ぐべきと判断した。これに伴い市長の選挙公約で着工目前だった市民プールの建て替えを先送りする。市長にとって苦しい決断だが、防災拠点整備はやはり急ぐべき課題だろう。

 市庁舎は1967年に鳥栖駅近くから現在地の国道34号沿いに新築移転した。市公共施設で唯一、耐震化されておらず、建物の各所でひび割れなどを確認できる。

 熊本地震では財政上の理由で建て替えが遅れていた宇土市庁舎が崩壊寸前になった。しかし、直後の5月の定例会見で橋本市長は市庁舎建て替え時期について、鳥栖駅周辺まちづくりや新産業集積エリア整備などの大型事業に一定のめどがつく「10年以上先になる」との見通しを示した。市の発展をけん引する大型事業がめじろ押しの中で、市庁舎を優先させることには市民の理解が得られないとの判断があったとみられる。

 これに対し市議会は6月定例会で熊本の状況を踏まえ「早急な市庁舎の耐震化や建て替え」を求める意見書を可決した。さらに市が市民プールを温水プール(総事業費18億円)に建て替える建設費を12月市議会に計上予定だったことから、11月中旬に自民ク、社民、公明、共産の4会派が市庁舎建て替えを「喫緊の課題」とする申し入れ書を市長宛てに提出した。

 こうした流れの中で、市長は補正予算案を公表する2日前の11月22日、市議会全員協議会で温水プール建設を先送りして市庁舎を建て替える方針を急きょ表明、「3年後(2019年度)の着工を目指す」とした。方針転換の理由については熊本地震以降も全国で大きな地震が頻発してリスクが高まっていることや、九州市長会で南海トラフ地震への対応について協議が進み、熊本地震同様に鳥栖が支援拠点になる可能性があることを挙げた。

 市長にとっては公約の先送りとなり痛手となったが、10月の鳥取県中部地震でも倉吉市庁舎が被災しており、庁舎建て替えの優先度は増している。一方で「19年度着工」発言は市長任期が19年3月であることから、議会などで「次期市長選への布石か」との臆測を呼んでもいる。

 政府の地震調査研究推進本部は2013年、鳥栖市付近に「日向峠-小笠木峠断層帯」があると指摘した。震度7が想定されており、もし地震が起きれば市庁舎が損害を受け機能不全に陥る可能性がある。市民に向けて政策転換の十分な説明を行うことを前提に、不測の事態に備えて市庁舎建て替えを優先することはやむを得ない判断と考える。(高井誠)

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