開門しない前提での和解協議の方向性が示されたことを報道陣に説明し、拒否する意向を明かした漁業者側弁護団の馬奈木昭雄団長(中央)=福岡市

 わずか20分の協議で「和解」の2文字が遠のいた。国営諫早湾干拓事業の開門問題を巡る訴訟で5日、開門しない前提で福岡高裁が示した和解勧告。国の基金案を評価する判断に、原告の漁業者や弁護団は「司法は国の言いなりだ」と反発し、協議を拒む姿勢を見せた。国は対照的に「前進」との受け止め方を口にして「原告や漁業団体に理解してもらえるよう真摯(しんし)に努力する」と淡々と述べた。

 漁業者側の弁護団と国の双方に、個別に和解の方向性を示した話し合い。20分ほどで報道陣の前に姿を現した馬奈木昭雄弁護団長は険しい表情を見せ、「漁業団体が基金案を受け入れなかった場合でも、開門を含めた議論には移らないという説明だった」と明かした。その場で協議の継続を拒否する意向を伝え、高裁は確定判決を取り消すような考えを示唆したという。

 内容を伝え聞いた確定判決原告の漁業者大鋸武浩さん(48)=藤津郡太良町=は「開門しないという前提は(昨年春に和解が決裂した)長崎地裁の協議をなぞるもので到底受け入れられない」と語気を強めた。太良町の漁業者、平方宣清さん(65)も「初めから『開門なし』では協議を続けられるわけがない」と声を落とした。

 一方、農林水産省農地資源課の高橋広道室長は「長崎地裁での協議は無駄ではなかった。少しずつだが前進しているのでは」と手応えを口にした。その上で「開門を求められた方々に理解していただくことについて、厳しいのは重々承知している。ただ、可能性はゼロではないと思う」と述べ、判決が出るまで協力を求めていく考えを示した。

 基金案を巡っては、基金の担い手として想定される有明海沿岸の漁業団体のうち、佐賀を除く3県が受け入れを表明。国は開門しない方針を明確にし、県有明海漁協も検討せざるを得ない状況になった。

 弁護団は「当事者は原告の漁業者ではあるが、外堀を埋めて脅そうというのをまだやろうとしている」と述べ、高裁が示した協議を続けることで、漁協への国の働きかけが強まることへの警戒感をにじませた。

 馬奈木団長は、干拓地での野鳥による農作物被害を巡る訴訟で、営農法人2社が潮受け堤防の開門を求めている現状を踏まえ「漁業者だけでなく、農業者も共同戦線で戦っていく」と力を込めた。

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