中国の第13期全国人民代表大会(全人代)第1回会議が北京で開幕した。昨年10月の共産党大会で習政権2期目がスタート、習近平国家主席(党総書記)の1強体制がより強固になったことを受け、今後の政権運営を担う国・政府の主要人事や国家機構改革を行う。

 2期目の最重要課題は経済だ。習政権は成長速度より質を重視する方針を打ち出し「小康社会(いくらかゆとりのある社会)の全面的な実現」を目標に掲げる。

 一定の成長を維持しながら経済の構造改革に本気で取り組み、貧困や環境対策で具体的な成果を上げて、国民生活を改善する必要がある。習氏は「党の指導」を掲げて個人独裁色を進めるが、国民の広い支持が得られなければ、国内の長期的な安定維持は難しい。

 李克強首相は全人代冒頭の政府活動報告で、今年の国内総生産(GDP)成長率目標について、昨年の実績6・9%を下回る「6・5%前後」と表明した。

 中国の改革・開放政策が始まって40年。GDPは日本円換算で約30倍に増加。2010年には日本を抜いて米国に次ぐ世界第2の経済大国となり、昨年のGDPは日本の2倍以上になった。

 習政権は、高度成長期は既に終わり、中低成長の「新常態」(新しい通常の状態)に入ったと宣言、第13次5カ年計画(16~20年)の期間中は年平均6・5%の成長目標を掲げており、今年の目標もそれに合わせた。

 しかし、景気のかじ取りは微妙だ。昨年は積極的なインフラ投資で成長は加速したが、不動産バブルなどで金融リスクの懸念は増した。国有企業の過剰生産や債務も深刻で、貧富の差の拡大や環境汚染への国民の不満は根強い。

 李首相は今年の重点目標として(1)構造改革の推進(2)イノベーション型国づくり(3)国有企業改革―などを挙げたほか、「三つの難関」として金融リスク、貧困、環境汚染対策への取り組みに努める方針を示した。

 習氏は昨年の党大会報告で「20年に小康社会を全面的に実現」「35年に社会主義近代化を基本的に達成」「50年、富強・民主・文明・調和の美しい社会主義近代化強国を完成」―という3段階の発展目標を提起した。

 今回の全人代で行う憲法改正では、習氏の姓名を冠した「新時代の中国の特色ある社会主義思想」を条文に盛り込み、国家主席の任期を2期10年に制限する3選禁止規定を撤廃。今会議で再選される習氏に「終身支配」の道が開かれる。

 習思想は「共産党独裁の堅持」を究極の目標とし、中華民族の偉大な復興という「中国の夢」の実現に向け、反腐敗闘争や国家安全観、社会主義イデオロギーの堅持を呼び掛ける。政治的締め付けを続ける習氏の強権政治の理論的支柱だ。

 経済も「国家資本主義」といわれ、国有企業を保護し、金融システムやメディアを厳しく統制する。こうした手法は自由で闊達(かったつ)な経済の発展を損なう恐れがある。

 また、強引な国民懐柔策は矛盾も生む。微小粒子状物質「PM2・5」対策は冬の青空を取り戻す効果を上げたが、石炭使用を厳しく禁じられた一部の庶民はほかに暖房がなく寒さに震えた。

 経済改革や国民生活の改善は、政治の民主化と並行して進めるべきではないか。(共同通信・森保裕)

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