ようやく春めいてきて、きょうは二十四節気の一つ「啓蟄(けいちつ)」。啓はひらく、蟄は巣ごもりのことで、土中に冬眠していた虫が、このころになると目覚めて地上に姿を現し始める。〈啓蟄の蟻(あり)がはや曳(ひ)く地虫かな〉高浜虚子◆虫の種類はあまたあれど、ほ乳動物の糞(ふん)を球状にして、ころがしながら巣に運ぶユーモラスな虫もいる。『ファーブル昆虫記』に登場するタマオシコガネ(スカラベ)という甲虫類の仲間である。古代エジプトでは神格化された◆糞球を太陽に見立て、それを脚でころがす姿に神秘性を感じ、太陽の運行をつかさどる「太陽神ケペリの化身」と考えた。以来、創造、復活、不死のシンボルとして、この虫をかたどった彫刻、護符、印章、装身具が作られたという(安富和男著『へんな虫はすごい虫』)◆こちらも、えっちらおっちらと荷物を運ぶ季節―。そう、引っ越しである。人事異動や進学で繁忙期は今月下旬から。今年はトラックのドライバーが足りず、希望時期に対応できなかったり料金の高騰を招いている。転居したくてもできない「引っ越し難民」を生みそう◆もともと、この業界は長時間労働で低賃金のイメージがあり、とうとう人手不足が顕在化。転居の時期をずらすか、大手業者だけでなく中小も探す努力を強いられそうだ。なんとも悩み深き春である。(章)

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