県に寄贈された中島さんのコレクションの一つ「鉄絵緑彩松樹文大平鉢」(17世紀前半)

 江戸時代に佐賀藩武雄領内で生産された陶磁器群「古武雄」に関する明るい話題が続いた。武雄市の青磁作家で重要無形文化財保持者(人間国宝)の中島宏さんが、約600点のコレクションを佐賀県に寄贈。武雄市観光協会は古武雄の祖といえる深海宗伝の顕彰事業に乗り出す。古武雄を再認識し、広く周知する契機にしたい。

 古武雄は17世紀前半から19世紀前半にかけて佐賀藩武雄領内で生産された陶磁器群。陶器は褐色の素地に白の化粧土を施し、緑釉(りょくゆう)や鉄釉で文様を描いたり彩色する点に特徴がある。象嵌(ぞうがん)や打ち刷毛目、釉のかけ流しなど、文様表現も多様だ。古唐津の流れをくむものの、唐津焼とは異なる意匠や技法もみられ、その独創性から価値が再評価されている。

 中島さんは50年にわたって収集してきた古武雄601点、陶片13点、参考品の中国陶磁8点の622点を九州陶磁文化館(有田町)に寄贈した。古武雄の代表作といえる「鉄絵緑彩松樹文大平鉢」(県重要文化財)や、緑と褐色の釉薬を流しかけた「緑褐釉櫛目(くしめ)草文大平鉢」など、古武雄を学術評価する上で貴重な資料になる。中島さんは「公的施設で古武雄の雄大で自由な世界を広く紹介してほしい」と願っている。

 武雄市観光協会が顕彰に取り組む深海宗伝は、豊臣秀吉の朝鮮出兵で慶長の役に従軍した武雄領主後藤家信が朝鮮から連れ帰った陶工の一人。武内町などに窯を築き、染付や象嵌など多様な技法を武雄の地に根づかせたとされる。今年は没後400年にあたり、観光協会は、業績を記した記念碑を建て、記念式典を開催する計画。併せて武雄の焼き物の歴史的な価値の掘り起こしや振興を図る。

 2016年末、武雄市図書館・歴史資料館で「古武雄 武雄のやきもの再発見」が開かれた。力強さや繊細さが目を引く多様な陶器類はもちろん、染付や赤絵が有田に集約される前に武雄でも生産されていたことを示す磁器類、さらに西日本最大の産地だったとされ広い流通を誇った甕(かめ)などが並んでいた。江戸時代に武雄が陶器、磁器、甕と多様な焼き物を生み出していたことを示す展観だった。

 残念なことに、こうした作品群を普段から目にする機会は少ない。温泉とともに陶芸もアピールしている武雄だが、市民や観光客が古武雄を含めた歴史を知り、素晴らしさを実感できるような仕掛けがあればいいと感じる。中島さんが寄贈した古武雄は、九州陶磁文化館がお披露目の展示企画を10~11月に行う計画を進めている。深海宗伝の顕彰記念式典は命日の10月29日ごろに行われる予定で、連動した企画もあっていい。

 2022年度には長崎新幹線が開通する。武雄を焼き物の里としてアピールするうえで古武雄は欠かせない素材になる。あらためて光を当てたい。(小野靖久)

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