今季のミカンの値が高いと聞く。全国的に前年の3割ほど上がっている。生産量が少ない裏年基調も要因だが、長い価格の低迷に産地が疲弊し、佐賀でもピークの1975年と比べ、栽培面積は6分の1◆生産者が減る中、太良町の山口直毅さん(75)はこだわりを求め続ける農家だ。主な肥料を人が食べられるものにした、自然環境にやさしい「エコ栽培」を今は手がける。コンブやカツオ、魚粉、糖蜜、パイナップル、米糠(こめぬか)などを、山口さん独自の方法で園地に入れる。害虫よけにニンニクやトウガラシも◆土や根にじんわりと効果が出るという。「ミカンも人間も同じで、出汁のうまさは分かると思ってね」。おかげで甘さと酸のバランスが良くなりコクが出た。スペイン由来のクレメンティンは、佐賀市の名のある果物店から引き合いがあるほど◆ミカン研究グループ「太良シトラス会」初代会長を務め、地域をリードしてきた。「研究熱心さは若手の手本」と現会長の早津昌俊さん(47)。「先輩たちにミカンづくりの楽しさを教えてもらった」と感謝する。次の芽もしっかりと育っている◆果樹の中で、栽培の「上手」と「下手」で取れ高に大きな差が出るのがミカン。それだけ奥が深い。「今になって面白くなってきた」。ミカンを作って55年になる山口さんの挑戦の言葉である。(章)

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