前立腺がんについては、このコラムでもたびたび触れてきましたが、先日はPSA(前立腺がん特異抗原)検診の記事が出ていましたね。新聞の影響が大きいのは言わずもがなで、当日から「自分の検査は妥当なのか?」とたずねて受診される方が増えました。

 確かにPSA検診にはまだ議論を深めなければならない点が多くあります。日本では胃がん、大腸がん、肝臓がん、肺がん、子宮がんの5大がんに対する検診は行政主導で行われています。これは、これらのがんにおいては検診を行うことにより死亡率を下げることができるとする「明らかな」研究結果があるからです。

 では前立腺がんについてはどうかと言いますと、先日の記事通り、まだ「明らかに」死亡率を下げるという結果は出ていません。しかし、統計の処理の仕方、結果の読み解き方で、同じ論文を別の人間が読んで解読することにより違った結論を導くこともあります。ですので、今はまだどちらの結論とも読み取れる研究結果しか出ていないのです。

 検診に対する統計的な考え方というのは、あくまでも「健常者が検診を受ける利益が確率的にどのくらいか」という話です。一方、個々のケースではどうかと考えると、がんがあるのかないのか、あるとしたらそれが命取りになるようながんであるのかどうかは、各々の患者さんについてはそうかそうでないか、0か100か、ということになります。これをどう捉えるかは患者さん一人一人が考えなければならないことなのです。

 「尿が出にくい、排尿回数が多いなど、前立腺がんを疑う症状がなければ(PSA検診を)受けない方がいい」とありましたが、「尿が出にくい、排尿回数が多いなどの症状があれば、症状がない人よりも前立腺がんの検出率が上がるのでPSA検診を受けた方がよい」というのが明らかになっている事実です。これをどう捉えるかはあなた次第です。(なかおたかこクリニック院長 中尾孝子)

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