将棋と囲碁に注目が集まっている。それぞれの第一人者が棋界初の国民栄誉賞を同時受賞した。将棋では中学生の最年少プロが公式戦で初優勝して喝采を浴びた。

 だが近年は、生活スタイルや価値観の多様化とともに、将棋や囲碁をたしなむ人口が減少の一途をたどっているのが現実だ。一時のブームに終わらせず、伝統文化として親しまれてきた将棋や囲碁をもり立てることができるか。人気を集める今こそ棋界には試練の時だ。

 話題をさらっているのは将棋界の新星、中学生の藤井聡太六段だ。国民栄誉賞を受けた羽生善治氏との公式戦初対決となった朝日杯オープン戦本戦準決勝で勝利した。決勝も制して初優勝し、規定によって六段に昇段。いずれも中学生初だ。

 「まだ自分に足りないものは多い。日々精進して上を目指したい」と語る謙虚な姿勢に、将棋ファンならずとも拍手を送る人は多いだろう。

 詰め将棋が得意で以前から終盤に強かったが、課題だった中盤も将棋ソフトを使って腕を磨いたという。発展する情報技術と伝統文化の在り方を考える上で興味深い。

 将棋の本やグッズが売れ、教室に子どもが押し寄せている。一過性のブームにしないために関係者が知恵を絞るよう期待したい。

 史上初の永世七冠を達成した羽生氏は国民栄誉賞授与式後「自分の限界に挑戦していきたい」と語った。20~30代の棋士がタイトルを争うのが普通で、47歳の羽生氏の二冠は驚異的だ。今後も年齢の壁を破り、多くの人に勇気を与えてほしい。

 古代インド発祥とされる将棋と古代中国に源流がある囲碁は、日本でも長い伝統があり、文化を豊かにしてきた。江戸時代に家元制度ができてプロが誕生。明治時代以降は新聞に掲載されて愛好者を増やした。「王手」「布石」といった言葉を将棋や囲碁の用語と意識せずに使っている人も少なくないだろう。

 しかし近年は楽しむ人が減っている。レジャー白書によると、2001年の将棋人口は1030万人、囲碁は450万人だったが、16年にはそれぞれ530万人、200万人とほぼ半減。漫画などのヒットで関心が高まった時期もあるが、長続きしていない。

 囲碁で初めて2度目の全七冠独占を果たし、国民栄誉賞を受けた井山裕太氏は「今後は世界戦で日本の存在を示したい」と決意を示した。確かに、国内でいくら強くても世界で通用しない状況を変えないと、未来は明るくならない。

 将棋は国・地域ごとに異なるゲームだが、囲碁はルールがほぼ統一されており、国際棋戦が盛んだ。日本勢は1990年代初めまで優位だったが、このところ優勝から遠ざかっており、中国と韓国がトップを争う。井山七冠は2月初め、主要国際棋戦での初優勝を懸け、中国の棋士との決勝戦3番勝負に臨んだが、1勝2敗で優勝を逃した。

 国際棋戦は決勝戦の勝負も1日で決着がつく。日本の代表的タイトルの保持者と挑戦者の対局は持ち時間が長く、2日間かけて戦う。幾多の名勝負を生んできた伝統の方式だが、日程や体力の面で国際棋戦に力を注ぐことを難しくしているという指摘がある。井山七冠や続く世代が世界で存分に戦えるよう対局日程などの工夫を一層進めるべきだ。(共同通信・上村淳)

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