三根梓氏

丸若裕俊氏

松尾俊一氏

 3月17日に始まる「肥前さが幕末維新博覧会」を前にしたリレーシンポジウム第4弾が、嬉野市社会文化会館リバティであった。幕末・明治期に外貨獲得手段となった嬉野茶がテーマで、パネル討議では、ゲストの女優・三根梓さん=嬉野市出身=ら4人が嬉野茶の魅力と今後の振興策について意見を交わした。要旨を紹介する。

 

■ゲスト

三根 梓氏   女優(嬉野市出身)

■パネリスト

本馬 恭子氏  女性史研究家(長崎市)

丸若 裕俊氏  丸若屋代表(東京)

松尾 俊一氏  茶師・起立工商会社(嬉野市)

■コーディネーター

 桑原昇 佐賀新聞社営業局アド・クリエート部長

 

 - 本馬さんのリードトークで、長崎の女性貿易商・大浦慶を通して、日本近代化に嬉野茶が大きな役割を果たしたことを紹介してもらった。

 三根 日本茶輸出のパイオニアが女性だったことが、同じ女性として誇らしい。そのきっかけが嬉野茶だったこともうれしかった。

 - 丸若さんは日本文化の再生屋として、伝統工芸に現代的なデザインを取り入れるなどユニークな試みをしている。昨年、松尾さんの嬉野茶を扱う茶葉の専門店「幻幻庵」を東京・渋谷に出したが、なぜ?

 丸若 おいしいと思ったことが何よりの原動力。20~30代と海外の方をターゲットに発信している。お茶は人と人のつながりを深められる。「ここだけで飲める」も大切だが、「家で人に飲ませたい」と思えるものを作りたい。

 - 「茶師」の松尾さんは以前、言語聴覚士だった。

 松尾 声を出そうとすればするほど出せない症例の人が、お茶を飲んだ時に「ああ」と自然に声が出た。それからお茶のリラックス効果に興味をもった。嬉野はお茶栽培にとても向いている土地。生産量が国内の数パーセントという小さい産地だから、生産者の工夫や個性も反映されやすい。

 - 消費の面では、ペットボトルが普及し、茶葉は厳しいと話を聞く。

 松尾 平坦な場所の大産地に比べて、山も谷もある嬉野は非効率でコストに差が出る。ペットボトル飲料は低コスト・低単価な茶を使うが、嬉野は希少性や品質を大事にした方がいい。

 三根 祖父がお茶問屋で、急須で入れたお茶をずっと飲んできた。ぬるめの湯を急須で入れた方が香り高く、すごくおいしい。でも東京の友人宅には急須がなかった。

 本馬 大浦慶と取引したオールトの夫人は、回想録に「日本茶は苦手であまり飲まなかった」と書いた。紅茶の習慣で、熱湯で入れたのではないか。温度調節は若い人には難しいかも。

 丸若 嬉野茶の魅力を理解している人がちゃんといるだろうか。成分や製法、品質でなく、魅力を。皆さん、意外と自覚していないのでは。

 

 アロマオイルあれば(三根)

 - 嬉野茶の未来に話を移したい。女性消費者として提案はあるか。

 三根 お茶の香りのアロマオイルがあるとうれしいが、お茶の香りのアイテムは多くない。

 本馬 抹茶を気軽に飲める店があっていいと思う。抹茶の後には必ず煎茶も飲みたくなる。

 

 「より良く」先進的に(丸若)

 - 嬉野で守り継ぐべきものと、変えないといけない部分については?

 丸若 本当に評価されている職人や農家は、常に工夫し、考え、前に進んでいる。手を抜くためでなく、何かをより良くするために変わるものは、どんどん先進的にやるべきだ。

 松尾 これからの時代、流れにどう適応していくかというスピード感が大事。淘汰(とうた)のさせ方を考えなきゃならない段階だ。その中で埋もれるものはどんどん変え、挑戦していき、お茶を好きな人を増やしたい。

 

 子どもたちに体験を(本馬)/ もっと世界に感動を(松尾)

 - 先人の志をどう未来につないでいくかという話に移ると、嬉野は新幹線開業やお茶の交流館開館など、未来へ進み出すいいタイミングにある。将来どんなまちになってほしいか。

 三根 幸せな笑顔がたくさんあふれる場所だから、笑顔の輪を大きくしていきたい。観光大使として引き続きPRも頑張りたい。

 本馬 子どもたちにお茶の作り方や急須の使い方を教える機会があれば、体験した人たちのアイデアが出てくるかもしれない。若者こそが新しい時代を開く。

 松尾 観光地として交流人口を増やす上でも、お茶は有用な資源。もっと世界にお茶で感動を届けたい。嬉野とその近辺で、何をどう伝えるかを世代を超えて認識するためのチームと環境をつくりたい。嬉野はいろいろなものがそろっており、医療観光やスポーツ観光も可能性がある。

 丸若 来た人がうれしい気持ちになってもらう体験をつなぐことが重要。女の人が喜ぶと書いて「嬉(うれ)しい」になる通り、女性が来て喜ぶまちづくりが、結果的にはみんなのためになる。財産は人。自然体で、嬉野人らしく生きることに共感して人が来るのが、一番自然な流れだ。今、それができるいいタイミングにあると思う。

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