佐賀新聞社の県内企業経営動向調査(2017年10~12月期)では、前年同期に比べて売上高が「増加」した企業が「減少」を5期連続で上回った。製造業で足踏みが見られたが、非製造業は2期ぶりに上昇し、設備投資も堅調に推移した。

 調査結果を見ると、500万円以上の設備投資を行った企業は前期比0・6ポイント減の47・9%。2期連続で下がったものの、印刷や電気・電子、運輸・通信などが意欲的で、40%以上の高水準を維持した。

 自社の景況感については、前期比で「良くなった」が3期連続で上昇。国内景気見通しも「良くなる」が「悪くなる」を4期連続で上回り、景気の回復傾向を裏付けた。

 懸念材料は、仕入れ価格の上昇。前年同期比で「上がった」は48・9%と2期連続で増加した。一方、製品価格が「上がった」は0・8ポイント減の13・2%。他社との競合などで販売価格への転嫁が進んでいない状況が浮き彫りになった。

 人材の確保も課題になっている。全ての業種で「労働力不足」を経営上の問題に挙げる企業が見られ、割合は過去最高の55・1%だった。(大田浩司)

■売上高

製造業で足踏み状態

 前年同期比で「増えた」は前期比0・8ポイント増の39・0%。2期ぶりに増加する一方、「減った」も3・5ポイント増の29・0%と6期ぶりに上昇した。「増えた」が「減った」を5期連続で上回ったものの、製造業で足踏みが目立ち、その差は前期より2・7ポイント縮小した。

 製造業は「増加」が0・3ポイント減の42・9%で、3期ぶりに低下。「減少」は8・1ポイント増の28・6%で3期ぶりに上昇した。印刷の全社、医薬品、電気・電子の6割以上が増収と答える一方、機械・金属は約4割が減収とした。陶磁器製造、酒造は「増加」と「減少」がともに4割で明暗が分かれた。

 非製造業は、「増加」が1・7ポイント増の36・2%で2期ぶりに上昇。「減少」は前年と同じ29・3%だった。建設関連の6割、卸売の5割が増収とする一方、運輸・通信、大型店の6割以上が減収と答えた。

 次期見通しは「増える」が30・3%、「減る」が22・2%となっている。

■経常利益

企業で明暗分かれる

 前年同期比で「増えた」は前期比0・6ポイント減の35・0%で、3期ぶりに減少した。「減った」は1・7ポイント減の31・0%で2期ぶりに低下。「増加」が「減少」を3期連続で上回ったものの、仕入れ価格の上昇などが影響し、企業によって明暗が分かれる形となった。

 製造業は「増加」が4・0ポイント増の38・1%。3期連続で増える一方、「減少」も3・9ポイント増の35・7%と2期連続で上昇した。電気・電子、陶磁器製造、機械・金属、食品製造は増益と減益が拮抗(きっこう)した。

 非製造業は、「増加」が4・0ポイント減の32・8%で2期連続で低下。「減少」は5・7ポイント減の27・6%で、2期ぶりに低下した。人材確保に苦しむ運輸・通信は増益が1社もなく、外部委託費や人件費の増加が影響したとみられる。

 次期見通しは「増える」が29・3%、「減る」が21・2%となっている。

■設備投資

6期連続で4割が実施

 500万円以上の設備投資を行った企業は前期比0・6ポイント減の47・9%。2期連続で低下したものの、6期連続で40%以上の高水準を維持した。

 製造業の実施企業は15・9ポイント減の50・0%。過去最高水準だった前期から大きく低下したが、電気・電子や機械・金属を中心に意欲的な姿勢が続いている。一方、陶磁器製造、縫製はともに全社が未実施だった。

 非製造業は11・2ポイント増の46・3%。3期ぶりに上昇し、実施企業は運輸・通信で8割、サービス・レジャーと金融で6割を超えた。

 次期は44・8%が実施を計画。電気・電子や食品製造、運輸・通信、サービス・レジャーなどで意欲的な企業が多い。

■自社の景況感

「良くなった」3割に回復

 前期比で「良くなった」は6・8ポイント増の33・0%。3期連続で上昇し、4期ぶりに30%台に回復した。「悪くなった」は2・4ポイント増の15・0%だった。

 製造業は「良くなった」が6・2ポイント増の35・7%、「悪くなった」は12・3ポイント増の21・4%。非製造業は「良くなった」が7・3ポイント増の31・0%、「悪くなった」が5・0ポイント減の10・3%だった。医薬品、卸売、建設関連などで改善が目立つ一方、運輸・通信、印刷は「良くなった」が1社もなかった。

 前年同期比では、「良くなった」が2・9ポイント増の32・0%、「悪くなった」は6・5ポイント増の25・0%。次期は「良くなる」が26・0%で、「悪くなる」を13・0%上回っている。

■操業度

「上昇」、機械・金属で5割

 現有人員で最大可能な操業度状態を100とした場合の平均は前期比1.7ポイント増の89.3で、2期連続で上昇した。100を超えた企業は5.1ポイント減の37.7%となり、3期ぶりに低下した。

 前期比で「上昇した」は9.8ポイント増の33.3%。機械・金属で5割に上ったほか、電気・電子、酒造などで目立った。「低下した」は4.7ポイント増の12.5%だった。前年同期比では、「上昇した」が4.1ポイント減の29.2%、「低下した」は0.3ポイント減の14.6%だった。

 次期は、25.0%が「上昇する」と回答。「低下する」は16.7%となっている。

■経営上の問題点

「労働力不足」が過去最高

 最も多かったのが「労働力不足」で、前期比5.1ポイント増の55.1%。割合はこれまでで最も高く、4期連続でトップだった。特に非製造業が深刻で、問題とする企業は6割に上った。

 業種別では、運輸・通信の8割超、卸売と建設の7割以上が「労働力不足」と回答。サービス・レジャーのほか、縫製、電気・電子も6割を超えた。

 2番目に多かったのは「販売・受注競争の激化」で、前期比6.3ポイント増の36.7%。「従業員教育」が34.7%で続いた。また、マイナス金利政策による厳しい経営環境を反映し、金融の8割が「利益率の低下」を問題と捉えている。

■仕入れ価格

「上昇」48%、コスト高続く

 前年同期比で「上がった」は6.8ポイント増の48.9%で、2期連続で増加した。「下がった」は2.0ポイント減の2.2%で4期連続で減少。原材料や製品の仕入れコスト高が続いている。

 製造業、非製造業ともに上昇したところが多く、業種別では酒造の全社、機械・金属の7割超、運輸・通信、建設関連、サービス・レジャーの6割超が「上がった」と回答。低下したのは、印刷と卸売の1社ずつだけだった。

 次期は35.6%が「上がる」と回答。「下がる」は4.4%にとどまっている。

■資金繰り

調達環境は改善傾向

 前期比で「楽になった」は3.3ポイント増の8.5%で、2期ぶりに上昇した。「苦しくなった」は0.8ポイント減の7.4%で3期ぶりに減少。調達環境の改善傾向がみられ、「楽になった」が2期ぶりに「苦しくなった」を上回った。

 製造業は「楽になった」が7.5ポイント増の9.8%、「苦しくなった」は0.6ポイント増の12.2%。非製造業は、「楽になった」が0.1ポイント増の7.5%、「苦しくなった」は1.8ポイント減の3.8%だった。

 次期は、7.4%が「楽になる」、8.5%が「苦しくなる」とみている。

■製品価格

「上がった」4期ぶり減

 前期比で「上がった」は0.8ポイント減の13.2%で、4期ぶりに減少した。「下がった」は1.2ポイント増の7.7%。販売競争が厳しく、価格への転嫁が進んでいない状況がうかがえる。

 製造業は「上がった」が0.3ポイント増の7.3%、「下がった」は2.6ポイント増の7.3%。非製造業は「上がった」が2.0ポイント減の18.0%。「下がった」は前期と同じ8.0%だった。業種別では、酒造、卸売の4割が「上がった」と回答。金融とサービス・レジャーの約3割が「下がった」とした。

 次期は16.5%が「上がる」と回答。「下がる」は6.6%となっている。

■国内景気見通し

非製造業で明るさ

 次期見通しは「良くなる」が前期比6.8ポイント増の32.0%、「悪くなる」が2.8ポイント減の4.0%。4期連続で「良くなる」が「悪くなる」を上回り、非製造業で先行きに明るさを感じる企業が目立った。

 製造業は「良くなる」が5.6ポイント減の26.2%、「悪くなる」は4.4ポイント減の2.4%。非製造業は、「良くなる」が15.9ポイント増の36.2%、「悪くなる」は1.6ポイント減の5.2%だった。

 次々期(4~6月)は、25.0%が「良くなる」と回答。「悪くなる」を21.0ポイント上回っている。

■調査結果を見て

陣内 芳博氏(佐賀銀行頭取)

堅調な景気回復続く

 県内経済は、個人消費において自動車販売の新型車投入効果が徐々に弱まる一方で、飲食料品の堅調な推移や家電を中心に耐久財の販売が増加している。観光面でも日本人旅行客が減少する中、訪日外国人観光客は引き続き増加傾向にあり、個人消費全体としては緩やかに回復している。

 今回の調査結果を見ると、5割強の企業が労働力不足を訴えており、今後の懸念材料ではあるが、売上高、経常利益は前回調査同様に好調を維持している。来期の見通しについても、好調な設備投資の動きがみられ、持続的な景気回復の期待感がうかがえる。先行きについては、引き続き海外情勢や金融市場の変動を注視する必要があるものの、今後も堅調な景気回復が続くとみられる。生産性向上や働き方改革への取り組みなど、変化する雇用環境への対応に注目したい。

二宮 洋二氏(佐賀共栄銀行頭取)

今春闘の賃上げに期待

 2017年10~12月の国内総生産(GDP)は、8四半期連続のプラス成長となった。県内においても、個人消費や設備投資などの内需が堅調に推移しており、県内景気は回復傾向にある。

 今回の調査結果を見ると、10~12月の売上高および経常利益の実績は、ともに「増加」が「減少」を上回った。

 一方で、原材料・製品の仕入れ価格が「上がった」との回答が増加傾向にある。最近の食料品やガソリンといった生活必需品の価格上昇にも、その傾向が確認できる。

 先行きは、生活必需品への支出が家計を圧迫する可能性や、労働力不足による企業の成長阻害などに留意が必要であるが、今春闘における賃上げが個人消費の回復、景気拡大につながることを期待したい。

福母 祐二氏(県経営者協会専務理事)

仕入れ価格、賃金上昇

 わが国経済は、2017年10~12月期のGDPが0・1%増となり、28年ぶりに8期連続のプラスとなった。

 調査結果を見ると、前回に比べ、製造業がやや苦戦し、非製造業で横ばい感が強くなっている。これは原材料・仕入れ価格の上昇分を製品価格にスムーズに転嫁できていないことが要因の一つとして挙げられる。

 また、雇用・労働環境を見ると、人手不足感の強さから賃金が上昇しており、人件費などのコストが上昇している。

 こうした中、賃金交渉が始まるが、人材確保の観点に加え、コスト競争力の維持や企業の永続的な発展を考慮した賃金決定がなされることが求められる。

 3月から「肥前さが幕末維新博」が始まる。このイベントが県、企業、個人の未来を考える絶好の機会となることを期待したい。

樋口 光雄氏(佐賀財務事務所長)

コスト増の影響に留意

 わが国経済は全ての地域で回復しているが、人手不足感がますます高まっている。今回の調査結果を見ると、前回に続き、売上高、経常利益ともに増加が減少を上回っており、設備投資も約半数の企業が行ったなど県内景気は回復基調が続いている。他方、経営上の課題として「労働力不足」を挙げる企業がさらに増加している。

 財務局調査で、人手不足解消に向けた取り組みで生じるコストを製品・サービス価格に転嫁しているか質問したところ、価格競争力低下への懸念などを理由に大多数の企業が「実施していない」と回答した。今回の調査結果でも、製品価格については約8割が「変わらない」となっている一方、原材料・製品の仕入れ価格は5割近くの企業が「上がった」と回答しており、今後の企業収益への影響について留意していく必要がある。

増渕 治秀氏(日本銀行佐賀事務所長)

企業マインド底堅い

 県内景気は緩やかに回復している。今回の調査結果では、売上高、経常利益とも前年比で増加した企業は4割弱に達しているほか、景況感が前期比で改善した企業も3割を超えている。

 極めて緩和的な金融環境の下、企業マインドは底堅く、所得から支出への前向きな循環メカニズムが働いているものとみられる。ただ1年前に比べ、原材料・製品の仕入れ価格が上昇した先(5割弱)が、製品価格が上昇した先(約2割)を上回っており、少なからず収益面に影響を及ぼし始めている点を留意する必要がある。

 今後は、省力化投資などを通じた生産性向上とともに、製品価格見直しの兆しや人手不足を背景とする賃金引き上げの動きに広がりがみられるか注視したい。また、雇用者所得環境の持ち直しが個人消費のさらなる改善につながることに期待したい。

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