19世紀に活躍したロシアの作家ゴーゴリの『鼻』は、おかしみ漂う奇妙な物語。ある役人の顔から、鼻が逃げ出してしまい、ようやく見つけた鼻は、立派な紳士に化けていて…◆この季節、くしゃみ、鼻水、鼻づまりと、トラブル続きの鼻がうらめしい。花粉症である。今年の九州北部地方は、花粉の量が昨年よりは少ないと聞いて油断していたが、そろそろ「多い」を示す赤いマークが目立ち、それだけで気がめいる◆薬局やスーパーでは、花粉症対策グッズがずらり。症状を抑える市販薬をはじめ、水中眼鏡さながらのゴーグルは、もはや定番だ。肌触りがやさしい高級ティッシュや、吹き付けておくと花粉が鼻につきにくくなるというスプレーまで出ている◆ゴーゴリの小説は、自分よりも上役に化けた鼻の紳士に対して、どう接したものかと苦慮する主人公の姿が笑いを誘う。当時の官僚機構への風刺が込められているようだが、鼻を取り外してしまうという発想に「ひょっとして、ゴーゴリも花粉症だったのかも」と想像してしまう◆平昌五輪では金メダルを取ったフィギュアスケートの羽生結弦選手が演技後、けがから治ったばかりの右足に手を伸ばしていた。「とにかく右足が頑張ってくれた」と。アスリートの流儀にならって、鼻もいたわってやらないと。逃げ出されては困るし。(史)

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