諫早湾干拓潮受け堤防

 国営諫早湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防排水門の開門問題を巡る訴訟で、福岡高裁は26日、口頭弁論を開いて和解勧告を出し、結審した。口頭弁論終了後に開門を求める漁業者側弁護団と国との和解協議が始まった。両者の主張には大きな隔たりがあり、先行きは見通せない。和解協議が決裂した場合には7月30日に判決が言い渡される。

 西井和徒裁判長は口頭弁論で「だらだらとやるのは双方のためにならないと思うので期限を区切りたい」と述べた。非公開の和解協議では、高裁の和解に向けた方向性を3月5日に示した後、4~5月にさらに3回の協議を行うと決めた。

 国側は、開門しない代わりの100億円の有明海振興基金を創設する和解案を盛り込んだ上申書を提出した。基金の管理運営団体に想定される佐賀県有明海漁協はこれまで賛同していないものの、「受け入れに向けた協議を行っている」と指摘。漁協が要望している潮受け堤防の排水ポンプの増設に対し、「和解に向けた協議が進展すれば検討する」との意向を示した。

 開門派の弁護団が1月に出した意見書では、和解協議によって開門による有明海再生と干拓地の農業振興を両立させる利害調整を提案している。口頭弁論では、「国が訴訟当事者ではない漁協に執拗(しつよう)な介入を続けている状況下では、基金案を和解協議の対象にするべきではない」と指摘した。

 国の基金案は長崎地裁での開門差し止め訴訟の和解協議で2016年11月に提案されたが、佐賀県側が受け入れずに17年3月に和解協議も決裂している。福岡高裁では開門関連の請求異議訴訟の控訴審が行われていて、最初の和解協議は昨年5月に打ち切られた。

 開門派漁業者が求めている開門差し止め訴訟の「独立当事者参加」の可否について、福岡高裁が3月19日に判決を言い渡して判断を示すことも決まった。

 国が福岡高裁確定判決に基づく開門義務を履行しないことで勝訴原告に支払った制裁金はこれまで10億6830万円に上る。

 

 開門派と国に判断迫る

 開門派弁護団と国の主張が真っ向から対立して解決の見通しが立たない中、福岡高裁が和解協議で5カ月の交渉期限を示したのは、両者に早急に「和解」か「判決」かの二者択一を迫る意図が込められている。

 裁判所が近く示す和解の方向性は、判決を見越した色合いになるのが予想される。判決の結論自体は予断を許さないものの、和解協議では開門の可否についても勝訴する可能性が高い当事者に有利な条件を示すことが想定され、もう一方は交渉の入り口から厳しい状況に置かれる。

 国にとって今回の訴訟は、開門せずに課されている制裁金の支払いを免れて開門を命じた確定判決を骨抜きにしつつ、基金案を成立させて有明海沿岸の地域課題の解決を図る狙いで進めている。ただ、自ら受け入れた確定判決を棚上げして「開門しない方針」を明確にし、開門派との対立はますます先鋭化している。

 国が開門義務に向き合わずに和解協議を進めても行き詰まることが見込まれ、先行きが不透明な和解の成立はさらに遠のくだろう。解決を見いだせるかは、裁判所の適切な指揮とともに当事者の真摯(しんし)な議論にかかっている。

 

■開門問題の請求異議訴訟

 諫早湾干拓事業問題で福岡高裁の開門命令の確定判決を履行しない国は、勝訴原告(漁業者)への間接強制金(制裁金)の支払いが課されている。国は請求異議訴訟を提起して制裁金の支払いを強制執行しないよう求め、一審佐賀地裁は棄却し、現在福岡高裁で審理されている。

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