「後輩が仕事をしやすい環境づくりにも取り組みたい」と話す中川原章氏=佐賀市の県医療センター好生館

 佐賀県医療センター好生館と佐賀国際重粒子線がん治療財団の理事長を務める中川原章氏(70)=佐賀市=が「2018年比較腫瘍学常陸宮賞」を受賞することが決まった。小児がんの一つ、神経芽腫に関する研究業績が評価された。

 中川原氏は、日本とアメリカで45年以上にわたって研究を続け、体幹の交感神経節や副腎髄質などから発生する「神経芽腫」の自然治癒の鍵を握る遺伝子「TrkA」を発見、さらに、ヒトとチンパンジーだけに見られる新規進化遺伝子「N-CYM」を初めて発見した。新薬開発につながることが期待されている。

 この賞は1995年11月、長年、がんなどの研究を続ける常陸宮さまの60歳の誕生を記念して創設された。これまでに国内外で活躍する研究者25人が受賞している。授賞式、中川原氏による受賞講演は5月、東京で開かれる。

■自然治癒の鍵、丹念に追う

 「受賞者の多くは海外の研究者。びっくりした」。比較腫瘍学常陸宮賞の受賞が決まった中川原章氏は率直に語りつつ、「ライフワークを評価されてありがたい」と喜ぶ。

 鳥栖市出身。中学の時に父親をがんで亡くし、「敵討ち」の思いで医師を志した。小児がん「神経芽腫」の研究に道を定めたのは、九州大医学部で学んでいたころ。複数の部位や血液に転移が広がっているのに、ある日突然、進行が止まり、回復する-。赤ちゃんに起きた奇跡としか言いようのない不思議な現象。メカニズムを解明できれば、治らないがんとの比較で「診断や治療法につながる」と考えた。

 動物のモデルがなく、人間でもまれ。小児がんが全体のがんの0・5%、その中で自然に治る神経芽腫は0・01%。道のりは研究費の確保も含め、平たんではなかった。その環境で、自然治癒するがんと、悪性のがんを比較し、両者のスイッチをする別の遺伝子も突き止めた。

 20年前、現在、国立がんセンター名誉総長を務める杉村隆氏に掛けられた「小さくてもいい。キラリと光る仕事をしなさい」の言葉を忘れない。今は後進に伝える側に立ち、「小児がんを研究できる環境づくりを一歩でも進められたら」と願っている。

このエントリーをはてなブックマークに追加