支援者らを前に、和解協議に入ったことを報告する漁業者側弁護団の堀良一事務局長(右)。中央は意見陳述した平方宣清さん=福岡市内

 混迷を深める開門問題は、話し合いのテーブルが再びセットされた。国営諫早湾干拓事業を巡る26日の福岡高裁の裁判。和解による解決は漁業者側と国の双方が望んでいるが、有明海再生の「手段」になる開門への考え方は対立し「同床異夢」のまま。7月末までの期限が設定された短期間の協議は、100億円の基金運営に関わることになる漁協も巻き込み、解決の道筋はなお見通せない。 

 

 「われわれは開門を目指してやってきて、再度和解協議の扉を開いた。『宝の海』の回復に向け頑張りたい」。この日の和解協議終了後、漁業者側弁護団の堀良一事務局長は、支援者らが集まった報告集会で決意を新たにした。

 判決期日を7月30日と定めた上での協議に「短めの印象だが、適正な利害調整がなされれば和解できる」と強調。2016年1月から約1年続いた長崎地裁での和解協議は、地裁が一方的に開門断念を迫って「決裂」した経緯があり、今回は漁業者側の主張も議論するよう繰り返し注文した。

 さらに、年明けから国が訴訟当事者ではない県有明海漁協に再三、基金案受け入れを求め、排水門へのポンプ増設にも歩み寄りを見せたことを「異様な姿」と非難した。

 国は和解決裂後の昨年4月、「開門しない方針を明確にして臨む」との大臣談話を出し、開門差し止め判決を受け入れた。福岡高裁に23日提出した上申書では、談話に沿って非開門前提の基金案での和解を「最良の方策」とする。

 「楽観できる具体策は持ち得ていない」としながらも、再度の和解協議入りを受け「今後も機会があれば、基金案の理解に向けて漁協にも説明したい」と引き続き働き掛ける考えを示した。

 

■佐賀関係者 基金案での幕引き警戒

 

 国営諫早湾干拓事業の開門問題を巡る訴訟で福岡高裁が和解勧告をした26日、佐賀県内の関係者からは問題解決に向けた進展を望む声の一方、国の意向に沿った基金案によって幕引きが図られることを警戒する声も上がった。

 「それぞれさまざまな思いはあるものの、和解協議の方向が出されたことは良いこと」。記者団の取材に応じた山口祥義知事は有明海再生の流れが加速することを期待し、今後も漁業者に寄り添う立場を示した。

 結審を前に、一度は拒否した基金案の条件付き受け入れを検討してきた佐賀県有明海漁協。徳永重昭組合長は「前回のように、基金案について意見を求められてから何らかの対応を取る」と当面は推移を見守る。その上で「双方とも和解を望んでいる。片方に偏った案を出したら、また同じパターンになるのでは」と協議の進め方に注文した。

 漁業不振が深刻な西南部地区の5支所でつくる協議会会長の岩永強・新有明支所運営委員長は「裁判所は国の意向に沿った開門なし前提の基金案を示してくるだろう。受け入れたら排水問題も幕引きされ、何も言えなくなる」と警戒。今後も西南部は足並みをそろえて行動すると語った。大浦支所の弥永達郎運営委員長も「国は、有明海の遺恨にするまいと願う漁業者の心情を受け止めて」と訴えた。

 

■長崎県内 開門派と反対派、決着必要性強調

 

 国営諫早湾干拓事業の開門調査問題で、請求異議訴訟控訴審の和解協議が福岡高裁で再開された26日、開門の是非を巡って対立した開門派と国と同様に、長崎県内の開門派漁業者や開門反対派の営農者も、自身の主張に沿った決着の必要性を強調した。

 島原市の開門派漁業者でこの日、同高裁で口頭弁論を傍聴した中田猶喜さん(68)は「簡単には妥協点が見つからないだろうが、(国の基金でなく)新しい案で議論すべきだ。仲裁できるのであれば、われわれの案でやってほしい」と望んだ。

 平成諫早湾干拓土地改良区の山開博俊理事長は取材に「長崎地裁と同じく、開門しない前提の和解勧告を出してほしい。干拓地では多くの営農者が順調に営農をしており、早く決着させてもらいたい」と語った。

 長崎県諫早湾干拓課は「訴訟の動向を見極めつつ、開門により地元に被害が及ぶことがないよう引き続き適切に対処する」とした。(長崎新聞提供)

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