平昌冬季五輪が幕を閉じた。北朝鮮が参加し、政治主導で生まれたアイスホッケー女子の南北合同チームが融和の象徴となった。朝鮮半島が平穏だったことに安堵あんどする。

 日本選手が大活躍した五輪として、記憶にとどめたい。金メダル4個を含むメダル獲得は13個。冬季五輪最多で、2020年東京五輪へ弾みをつけた。だが、五輪の価値はメダルの数ではない。日本選手のフェアな戦いぶりやスポーツマンシップを発揮した振る舞いが、感動や勇気をもたらした。評価はここである。

 けがを克服したフィギュアスケートの羽生結弦選手の鬼気迫る演技。スピードスケートで日本女子初の金メダルを獲得した小平奈緒選手が示した、3連覇を逃した李相花(イサンファ)選手をいたわり、たたえる姿。切磋琢磨しながら積み上げてきたライバルとの時間の重さがうかがえた。骨折を押して銀メダルを得たノルディックスキー複合の渡部暁斗選手は潔さがあった。

 スキーのモーグル男子やカーリングなど新たな歴史をつくった競技も多い。新鮮な驚きや、興味、底の深さを知った。われわれに冬季競技の地平を広げさせた大会だ。

 触発されて興味を抱く子どもたちが出てくるだろう。そこから才能豊かな選手が生まれれば、平昌の大きなレガシー(遺産)となる。国は底辺のスポーツ振興、環境整備にも力を注ぐべきだ。

 20年東京五輪へ、教訓もあった。フィギュアが日中、ジャンプやスケートは深夜。幾つかの競技は常識外の時間に実施された。時差のある欧米のテレビマネーが透ける。最高のパフォーマンスには慣れ親しんだ時間が不可欠。「アスリートファースト」の原則を損なってはならない。

 スタンドは空席が目立った。冬季スポーツが浸透していない国情の反映だろう。2年後、われわれは人気競技、自国に関わりなく世界を応援したい。各国の人々とスタンドで交流し、相互理解を深めることが、五輪憲章でうたう「人類への貢献と平和の推進」につながる。五輪の担い手は選手だけではない。

 政治が表に出て、融和が演じられた。五輪を契機に実現した南北首脳級の会談は評価したい。しかし、融和は持続してこそ価値を生む。4月に予定される米韓合同軍事演習への北朝鮮の対応次第で、つくられた平和が崩れる懸念は消えない。

 国際オリンピック委員会(IOC)は閉会式でロシアの国旗、国歌の使用を許さなかった。ソチ五輪での国家関与のドーピングを受け、今回は潔白を証明したロシア選手だけを個人資格で参加させた。だが、その中から2人の違反が出た。問題がなければ閉会式でロシアの復権を認める方針だったIOCが方向を転じたのは当然で、決断を支持したい。ロシア首脳は、国威発揚を目指した違反行為が招く結果をかみしめるべきだ。

 薬物問題は日本にとって対岸の火事ではない。今回、代表から陽性反応が出た。カヌーではライバルを陥れる薬物混入事件もあった。東京五輪へ薬物対策は急務であり、選手はフェアプレーの意義を認識してほしい。

 スキーとスノーボードの「二刀流」で史上初めて優勝する選手が現れた。多面化を表す偉業だ。一方、テレビ映えする派手な種目が増えた。冬季五輪は原点から遠ざかってきていないだろうか。(共同通信・小沢剛)

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