ジョブカフェSAGAでの企業説明会。人材確保が課題となっている=佐賀市白山

 生徒たちの目は部品や金具にくぎ付けになった。1月下旬、佐賀市の佐賀学園高校で1年生を対象に開かれたものづくりや町工場の魅力を紹介する交流会。高度な技術が詰まっていて、電柱や街灯、給湯器の一部など生活の中の多くに佐賀県内企業の製品が用いられていることに関心が寄せられた。

 製造業の経営者や後継者らでつくる佐賀青年工業会が昨年から訪問を始めた。生徒からは給料などの待遇や職場での人間関係など就職に関する質問が上がった。「実際に物を見ると興味を持つのを実感した」と小宮光則理事長。企画した背景には年々深刻になる現場の人材不足があった。

 県内総生産額のうち製造業が占める割合は23%で、九州では大分県に次いで2番目に高い。ところが、工業系高校生の6割が県外に就職するなど製造業の人材流出に対して行政からの有効な手だては見いだせなかった。山口祥義知事は就任直後の2015年度に10億円の「ものづくり人財(じんざい)創造基金」を創設し、4年かけて重点的に取り組む姿勢を示した。

 小中学生の職場見学のコーディネートや工業系高校生の資格習得と技術向上の支援、保護者を対象とした県内企業の広報など幅広く事業展開した。小宮理事長は「新たなビジネスにつながる技術を持つ県内企業は多い。採用では待遇面で県外の大企業に対抗するのは難しい中、県内のものづくりへの理解が広がるのは意義がある」と指摘する。

 

■既存政策と相乗効果を

 

 県外への「人材供給県」からの脱却に向け、製造業や高校生に限らず大学生や社会人にもアプローチを図る。Uターンなどを通じて県内企業に就職した場合に10万~30万円を支給する奨励金制度を創設し、求職者への呼び水とした。新年度からは県内企業の採用力向上に向けた新たな取り組みに着手する。求職者へのアピールや社内体制などを専門家が個別にコンサルティングして支援する。

 大学新卒者対象の県内外の企業説明会に参加する佐賀市内の企業の採用担当者は、学生が知名度のある大手企業に流れがちな傾向を肌で感じ取ってきた。「暮らしやすさや堅調な企業が多いことなど佐賀のアドバンテージがなかなか伝えきれていない」と採用の厳しさを吐露する。

 地域間競争の激化に伴って山口県政は「佐賀」の広報戦略も強化している。採用担当者は「佐賀のイメージが上がると就活中の学生の反応も良くなる。行政のPRは地場企業の人材確保につながることにも目を向けて工夫してほしい」と注文する。急務になっている県内の人材不足への対応とともに、総合計画の最終年度として既存の政策と新たな取り組みを結び付けながら相乗効果を図る視点が求められる。

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