農家から転身し、自作の箱ワナを製造、販売している太田政信さん。右は妻の悦子さん=嬉野市嬉野町

■やりがいは「地域の役に立つ」

 野生鳥獣による農作物被害が全国的に深刻な中、農家から転身し、イノシシを捕獲する「箱わな」の製造に乗り出した人がいる。嬉野市の太田政信さん(29)。「被害がひどく、農家だけではどうにもできない」と昨年9月から、わな造りに専念。地域の役に立てることがやりがいと話す。

 実家の農家で21歳から茶やコメを栽培。山々に囲まれた地域で、イノシシ被害に悩まされてきた。「田んぼに入り、茶畑をほじくり返す。畑に行くまでの道も壊された」。市販のわなは1個5~10万円と負担は大きく、5年前にわな猟の免許を取得。自宅にあった溶接の道具を使い、独学で製作を始めた。

 試行錯誤を繰り返した太田さんの箱わなは、幅80~90センチ、奥行き約2メートルと通常より大きいのが特徴。高齢者でも扱えるように極力軽くしている。販売価格は5万5千円からで、レンタルもできる。これまでの販売実績は約30個。収入はまだ安定しないものの、初めて箱わなを販売した農家からは「仕掛けて4日目に9頭入った」と連絡が来たといい、捕獲の実績も徐々に積み上げている。

 2016年の県内の鳥獣による農作物被害額は1億6770万円。このうちイノシシが約6割を占め、捕獲頭数は過去最多の約2万8千頭に上る。中山間地域を中心に、イノシシのすみかにもなる耕作放棄地は増え、県内の狩猟免許保持者も約7割が60歳以上と高齢化が課題になっている。

 「若い人に狩猟を身近に感じてもらうことが大切」。3年前に猟銃の免許も取得した太田さんは「嬉野狩部」と銘打ったグループを結成、SNSで情報を発信しながら週末にイノシシの解体体験や試食会も開く。

 「仲間を増やし、農家にとって必要な存在になりたい」。今後は処理場を建てて肉を販売できる体制を整え、経営を安定させたいと考えている。

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