松本清張原作の映画「張込み」(1958年)は、鉄道好きには心躍る作品である。しかも佐賀が主な舞台。東京で起きた強盗殺人犯を追い、刑事が佐賀に向かう◆その冒頭シーンは語り草だ。松竹マークが終わると、そこは横浜駅。アナウンスが流れる。刑事2人が脱兎(だっと)のごとく階段を駆け下り、発車する夜行列車にすんでのところで乗り込む。のっけから、わくわく感満載だ◆横浜からのほぼ1日の列車の旅が延々と映し出される。映画評論家、西村雄一郎さんの『清張映画にかけた男たち』(新潮社)によれば、脚本の橋本忍は九州まで、いかに遠かったかという距離感を出したかったらしい◆昔も今も住民の足になっている鉄路。なのにJR九州の3月17日のダイヤ改正で、佐賀県内を走る在来線は1日のうち特急6本、普通12本が減ってしまう。地元は「生活への影響が大きい」と猛反発。沿線自治体との事前協議がなかったことも問題になった◆「乗り鉄」「撮り鉄」「食べ鉄」…。世に鉄道ファンは多く、「列車もの」が多い清張映画は支持が高い。観光列車も人気だが、ローカル線は沿線住民の日々を支え、環境に優しく低コストの手段。事業者側も採算の難しさをもっとオープンに語り、自治体、住民と課題を共有できればと思う。危機の時ほど知恵を絞る試みが大事になる。(章)

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