民間人を巻き込んだ陸上自衛隊ヘリコプターの墜落事故から2週間余り。防衛省は事故機が所属していた目達原駐屯地のヘリの飛行再開に踏み切った。

 なぜ事故は起きたのか。

 いまだ原因は特定されていない。事故を起こした機体と同型機は飛行させないようだが、事故原因を特定できていない以上、ほかの機種だから安全だとは言い切れまい。

 これまでに事故の状況などから、ヘリの羽根を回転軸に固定する部品「メインローターヘッド」が着目されている。だが、部品に欠陥があったと結論づけるのは早計だ。しっかりと時間をかけ、徹底的に究明しなくてはならない。

 この部品をめぐっては、当初は、「新品」に交換したばかりだったと発表したが、後に「中古」部品だったと修正した経緯がある。

 極めて基本的な情報にもかかわらず、事実と異なる情報が放置され、修正までに10日近くもかかっている。「誤った報告が伝わり、新品と誤認した」と説明していたが、不自然ではないか。

 連絡体制の不備も浮き彫りになった。駐屯地の地元である吉野ヶ里町に、連絡が入ったのは事故から1時間以上たってからだったという。もしもまた事故が起きたときに、どう対応するつもりか。実際に自治体を交えた訓練を実施するなど、住民の目に見える形で示してもらいたい。

 特に理解に苦しむのは、飛行ルートの設定である。

 なぜ、事故機は、住宅や学校の上を飛んでいたのか。「試験飛行」である以上、不具合やトラブルがないかを確認するのが目的のはずだ。最悪の場合は事故もありうると考えるのが当然だろう。

 いつから、この飛行ルートが使われてきたのか、今後、どう改善するのか。しっかりと検証した上で、具体的に住民に示すべきだ。

 この事故は、自宅で事故に遭った児童だけでなく、周辺の子どもたちに大きな衝撃を与えている。

 神埼市教育委員会によると、千代田中部小、千代田中の全校児童生徒を対象にした調査で、「何らかの形でストレスを持っている疑いがある」と判断された子どもは、小学生で約60人、中学生で約50人もいたという。子どもたちの心のケアには、落ち着きを取り戻す時間の確保が求められよう。

 自衛隊員2人が亡くなり、さらに住民が犠牲になってもおかしくはなかった。これほど深刻な事故にもかかわらず、なし崩し的に飛行再開に踏み切った防衛省の姿勢には、不信感ばかりが募る。

 この上、自衛隊が導入する輸送機オスプレイを佐賀空港に配備するつもりだろうか。安全性が疑問視されている、いわく付きの機体である。もはや、受け入れの是非を議論する環境は根底から崩れており、計画そのものを見直すべきではないか。

 県議会は、国に対して再発防止や原因究明を求める意見書を全会一致で可決した。「隊員の命を奪い住民をも巻き込む重大な事故で、自衛隊の信頼を揺るがしかねない。厳重に抗議する」。国はしっかりと受け止めるべきだ。

 事故原因を特定できていない上、浮き彫りになった課題にも対応せず、飛行再開だけを進めていく。このまま、県民が置き去りでいいはずがない。(古賀史生)

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