森下信氏

 国立研究開発法人・情報通信研究機構(NICT)は日本で唯一、ICT分野を専門とする公的研究機関。電波を使った観測技術を研究し、日本標準時の決定、標準電波の送信も行っている。

 研究結果を最大化するために「オープンイノベーション」を推進している。産学官の研究者が開かれた環境の中で成果を共有しながら実証実験を進め、社会への導入につなげるものだ。

 これまで人工知能(AI)を使った解析の土台となるデータベース構築、サイバー攻撃に対抗できる人材育成、災害に強い情報通信技術などの共同研究に取り組んできた。

 電機メーカーや印刷会社とのオープンイノベーションで開発したのが、無料の多言語音声翻訳アプリ「ボイストラ」だ。スマートフォンに話し掛けるだけで最大31の言語が文章として表示される。このうち16言語は音声出力ができる。話し掛ける言葉は、日本語や英語、フランス語、中国語、など20の言語に対応している。

 音声翻訳の研究開発には30年以上かかった。AIの深層学習のノウハウを生かし、単語や文章の意味を抽出して意訳することに成功した。2020年の東京五輪・パラリンピックでのおもてなしになればと思う。

 ボイストラの実証実験はさまざまなところで進んでいる。買い物や診療、鉄道でのアナウンス、観光案内などで利用されるようになるだろう。外部からの意見を積極的に取り入れ、共に研究を進めていきたい。

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