下條真司氏

 九州ICTセミナー(九州総合通信局、九州テレコム振興センター主催)が福岡市で開かれた。研究者や大学教授、通信事業者の担当者が講演し、あらゆる機器がインターネットにつながる「モノのインターネット(IoT)」の普及により、生活環境や産業構造が大きく変革する可能性を示した。登壇した3人の講演要旨を紹介する。

低コストでビジネス創出

 IoTは私たちの生活環境を激変させるだろう。例えば米国で急速に普及している空調サービス「NEST(ネスト)」。人が家にいる時間帯を学習し、快適な温度になるようにエアコンやヒーターを調整するサービスだ。製品ではなく、体験を売るビジネスへと変革してきている。

 インターネット上で情報を保存・管理するクラウドで行われている点も大きい。多くの家庭やオフィスのデータを大量に収集し、これを基に快適な環境を提案する。仮に町全体の空調がネストになれば、電力需要が集中する時間帯の電力使用量を抑えられ、地域ごとにエネルギーの効率化を進める「スマートシティー」を、コストをかけることなく実現できる。

 こうしたネット上のサービスは、トヨタの「カイゼン方式」を下敷きにしている。提供したサービスの無駄や不具合を徹底的に排除し、改善を重ねる。需要がないと判断すれば撤退し、新しいサービスを提供する。できるだけコストをかけずに、何度も失敗しながらビジネスを確立していく。米グーグルの「ラボ」がその典型で、低コスト、最小限のサービスで市場の反応を探っている。

 IoTにはリスクもある。既存の産業構造を大きく変え、無くなる仕事も出てくるだけに、社会や人と調和するのか、配慮が必要になるだろう。ロボットによる介護、個人情報の活用に関しては社会実験を進めながら考えていくべきだ。

 もう一つは、プライバシーの問題だ。個人情報を収集するセンサーが組み込まれた機器類がばらまかれるため、セキュリティーの穴が必然的に多くなる。関わる人が多い分、感染源も増える。セキュリティーシステムは設定して終わりではなく、運用こそ大事。安全かどうかを常に監視し、感染することを前提とした上で被害を最小限に食い止める体制を整えたい。

このエントリーをはてなブックマークに追加