「一人ではない。走り出すまでは。走りはじめるのを、走り終えて帰ってくるのを、いつでも、いつまでも、待っていてくれる仲間がいる。駅伝とは、そういう競技だ」―。三浦しをんさんの小説『風が強く吹いている』の一節である◆箱根駅伝出場を目指す弱小陸上部が主人公。走ることとはまったく無縁だった若者たちが、互いに刺激しあい、支えあい、自らの限界に挑む。きょう開幕する「第58回郡市対抗県内一周駅伝」もまた、一本のたすきをつなぐ覚悟を選手たちに問いかける◆最大の見どころは、6連覇がかかる小城市チームを止めるのはどこか。駅伝日本一を決める元日の「ニューイヤー駅伝」に、県内から初めて出場した実業団チーム「ひらまつ病院」のメンバーを擁する小城には、死角がないようにも見える◆打倒小城の筆頭は、返り咲きを狙う佐賀市チームだろう。今年は関東でしのぎを削る学生たちが新たな戦力として加わった。昨年3位の唐津・玄海も侮れない。選手たちは3日間で33区間、合計272・8キロを走る◆駅伝のコースは「なんの変哲もないありふれた町。でも、ひとの生活するにおいがある。道のわずかな起伏はそのまま、そこを踏みしめて通った人々の歴史の刻印だ」(『風が―』)。私たちのふるさとを、私たちの町のランナーが駆け抜けてゆく。(史)

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