1人暮らし世帯が増え続けている。既に全国で3割を超えた。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、22年後の2040年には、全世帯の4割になるという。見過ごせないのは、中でも高齢者(65歳以上)の1人暮らし。推計では、40年には男性の5人に1人、女性は4人に1人に増える。

 1人暮らしの高齢者で問題なのは貧困と孤立だ。高齢者の貧困問題の専門家などによると、年収が生活保護水準を下回る1人暮らしの人は約半数とみられる。このうちの一部は生活保護を受けているが、年金だけでギリギリの生活を送っている人は多い。

 例えば1人暮らしの高齢女性で、自営業だった夫に先立たれた場合、国民年金は満額でも月約6万5千円。それだけで暮らすのは難しい。まして住まいが賃貸なら、預金を取り崩していくうちに、“老後破産”に近づく。

 元気な時はまだいい。病気やけがなどを抱え込めば、支えてくれる家族などがいない場合、医療費や介護費用は重い負担となる。

 少子高齢化が進む中、年金、医療、介護といった社会保障費は、国民所得額の3割以上を占める。現役世代が65歳以上のお年寄りを何人で支えるかをみると、1990年は5・1人で1人の高齢者を支えていたのが、2030年には1・7人で支える構造になり、持続可能性が低くなる。

 憂慮すべきなのは、非正規雇用など不安定な雇用形態が増えており、結婚しない若者もまた増加していることだ。50歳まで一度も結婚をしたことのない人の割合を示す「生涯未婚率」が上昇し続けている。親と同居し、その年金を頼りにしている子どももいて、親が亡くなれば“共倒れ”になる危険性が高まる。

 介護などの場面で、これまでのような家族による支え合いが期待できないのであれば、官民で支援するしかない。

 政府は、24時間切れ目のないサービスや見守りなどの生活支援を充実させる方針である。ただ、国の財政も厳しく、支援を行き渡らせるには、住民やボランティアも含めた地域の手も借りなければならなくなる。

 お年寄りの生活相談や介護サービスの拠点でもある「地域包括支援センター」などを核にして、福祉団体やNPO、介護事業所、社会福祉協議会などが連携。地域の特性に合わせた、高齢者と社会との「つながり」を再構築していくことが肝心だろう。

 一つは、住民同士の交流を促す仕掛け。加えて高齢者同士での見守り―。それらが持病や要介護度を悪化させない、予防的な役割も果たす仕組みになるなら、世代をリレーして継続可能だろう。

 無視できないのは孤立の問題だ。とりわけ中高年の男性は、誰かに助けを求めるのを善しとしない傾向があり、意識して人とのつながりの糸を切らないことが大事になる。できるのであれば、老後も働き、収入とつながりの両方を確保するのも一つの打開策だ。

 少子高齢化が進み、「課題先進国」といわれる日本。政府は厳しい現実を直視した上で、数十年後を見据えた社会保障のあり方を提示すべきだ。それをもとに国民も真剣に議論と努力をしなければ、安心の明日はない。(横尾章)

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