第58回郡市対抗県内一周駅伝(佐賀新聞社・佐賀陸上競技協会主催)が16日から始まる。18日までの3日間、13チームが33区間、272.8キロにわたってたすきをつなぐ。選手や関係者だけでなく、沿道で声援を送る人たちも一緒になって、地域の一体感を高める機会にしたい。

 今大会は、元日の全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)に出場した「ひらまつ病院」の選手らを擁する小城市が6連覇を狙う。昨年、59秒差で優勝を逃した佐賀市が雪辱を果たせるか。この2チームを軸に、唐津・玄海や杵島郡、伊万里市、鳥栖市などが絡む展開が予想されるが、スポーツの魅力はこうした上位争いにとどまらない。

 「駅伝」と聞くと、以前、スポーツ紙で紹介されたエピソードを思い出す。1984年の都道府県対抗女子駅伝の開会式。開催地・京都市在住のフォークシンガー高石ともやさんが選手たちを励ますために一編の詩を朗読した。

 「ここまで来るのに一生懸命、頑張ってきた自分も、苦しんだ自分も、喜んだ自分も、全部知っているのは、あなた自身だから。ここに来た自分を、人にほめてもらうんじゃなくて、自分でほめなさい」

 この場に岡山県チームの補欠選手として参加していたのが当時、高校生だった有森裕子さん。詩を聞きながら、「今の私には言えない。補欠なんだから。自分をほめることはできない。いつか言える選手になろうと思った」という。

 それから12年後、有森さんはアトランタ五輪女子マラソンで銅メダルを獲得した。話題となった「初めて自分で自分をほめたいと思います」という言葉は、この時に生まれた。

 オリンピックから地域の大会まで、競技レベルに差はあっても、選手一人一人にそれぞれの目標がある。今回の県内一周駅伝でも優勝、区間賞を狙う選手もいれば、一つでも順位を上げる、1秒でもタイムを縮めることが目標という選手もいる。中には、補欠で出場機会がない選手もいるだろうが、その悔しさは有森さんのように飛躍への一歩にできる。

 応援する人たちは順位や記録だけでなく、「ここまで来た」選手の努力に思いを寄せて心が動く。大会期間中、佐賀新聞ではレース結果だけでなく、市郡の代表として奮闘するチームや選手、支える人たちのドラマも伝えていく。その思いを共有してもらい、”地元愛”が強まればいい。

 それが一体感を高め、地域スポーツの振興、これからのまちづくりにもつながっていく。多くの人の協力によって開かれる駅伝が地域の活力を増す一つの契機になれば、より意義のある大会になる。(大隈知彦)

このエントリーをはてなブックマークに追加