早くも「ひな祭り」イベントが各地でめじろ押し。佐賀市でもきょうから「佐賀城下ひなまつり」が開幕する◆「現在の私に雛(ひな)祭りのたのしいのは、雛壇の白酒や桃の花を見ると、もう長い冬も終りになる、いよいよ春が来るのだという確かな手形をもらったうれしさなのである」と、作家の円地文子(1905~86年)が、エッセーにつづっていた◆少女時代に買ってもらえなかったひな人形を、長女の誕生をきっかけに毎年、少しずつ買い足した。が、戦時中、空襲に。「押入れの中で美しい小さい人形の一つ一つが灰になって行ったさまを無残に思い描いた」。ひな人形で娘と一緒に遊んでいた友達の少女たちも、消息はほとんど分からなくなった、と◆その空襲が、現代の平和な佐賀によみがえったようだった。自衛隊の対戦車ヘリコプターの墜落事故で、炎上していた民家の光景が頭から離れない。はだしのまま、割れたガラス窓からはい出した少女にも、ひな人形のように大切にしている宝物があったろう。なぜ、こんな目に遭わねばならなかったのか◆同型機は飛行停止になり、小野寺五典防衛相が佐賀までやってきたが、いずれ、彼女たちの頭上をヘリは飛ぶ。オスプレイの佐賀空港配備計画も、何事もなかったかのごとくに進めるのかもしれない。春が近いというのに、心は重い。(史)

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