運営委員長・支所長会議であいさつする徳永重昭組合長(左)=佐賀市の県有明海漁協本所

 国営諫早干拓事業(長崎県)の開門問題を巡り、佐賀県有明海漁協は9日、開門しない代わりに国が提示した100億円の基金案について、「現時点で判断できる状況ではない」として結論を持ち越した。漁業不振が深刻な県西南部地区の意向を踏まえ、福岡高裁の開門関連訴訟の動向を見極める必要もあると判断した。訴訟の結審後に見込まれる和解協議の行方は不透明な状況となった。

 

 全15支所の運営委員長・支所長による会議を佐賀市の漁協本所で開き、対応を検討した。非公開で行われ、出席者によると、西南部地区の5支所は3日に独自に開いた会議で判断を見送ったことを報告。東部、中部地区の代表者も西南部の置かれた厳しい状況を理解し、統一した態度をとる考えを示したという。

 会議後、徳永重昭組合長は「『佐賀の漁業者はみんな一緒』と(西南部に)寄り添う意見だった」と話した。10日に開く佐賀、福岡、熊本3県の各漁業団体でつくる諫早湾干拓事業対策委員会の会合では、佐賀側から国に対して基金案の受け入れの結論は示さず、現状報告にとどめる。

 基金案を巡っては、福岡高裁の訴訟が26日に結審した後に和解協議へ移行する可能性がある中、国は基金による解決を進めるため、運営主体に想定される漁協への働き掛けを強めている。漁協は1月31日、基金と別枠での排水ポンプ増設や小まめな排水の確実な実施、有明海再生事業の継続を条件に基金案の受け入れを全支所へ提案していた。

 徳永組合長は「基金案はまだ仮定の話。高裁から実際に和解案が出てきた時に、漁業者が影響する部分があれば何らかの対応をしないといけない」として、当面は訴訟の推移を見守る考えを示した。

 訴訟では、原告漁業者の弁護団が開門を前提にして有明海再生や農業振興基金創設などでの和解協議を求める意見書を福岡高裁に提出している。国が2016~17年に長崎地裁の開門差し止め訴訟の和解協議で示した開門に代わる100億円の基金案は、佐賀県側が受け入れを認めずに実現しなかった。

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