北朝鮮が8日、朝鮮人民軍創建70年に合わせ、昨年11月に試験発射した米本土を射程に置く大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」も登場させる軍事パレードを実施した。9日開幕した平昌(ピョンチャン)冬季五輪を舞台とする韓国への融和攻勢とは対照的なこの強硬な姿こそ、韓国はじめ国際社会が警戒し、対処しなくてはならないものだ。

 平昌五輪を契機に加速しているように見える南北和解の流れは、3月半ばに終わる五輪・パラリンピック後に試練を迎える。五輪開催を理由に延期された米韓合同軍事演習が4月にも再開される見通しで、これに北朝鮮が強く反発するのは明らかなためだ。五輪後の展開に備え国際社会、特に日米韓の連携を固めることが、これまで以上に求められる。

 南北和解を演出するだけでは、北朝鮮の核兵器保有に対する野心を転換させることはできない。北朝鮮の核問題に何の手も打たずに南北関係が改善に向けて進めば進むほど、北朝鮮は核保有国としての存在を韓国が黙認したと既成事実化し、非核化を求める国際社会への対抗カードとして利用する懸念もある。

 南北関係が対立から緊張緩和に向け動きだすことは重要だ。対話を続けることも必要だろう。しかし、2000年と07年に実現した南北首脳会談の状況とは、北朝鮮の核開発とその脅威の度合いが、全く異なることを文在寅(ムンジェイン)大統領は直視すべきだ。

 北朝鮮は、公式序列2位の金永南(キムヨンナム)最高人民会議常任委員長だけでなく、金正恩朝鮮労働党委員長の実妹、金与正(キムヨジョン)党政治局員候補も五輪開会式に合わせ訪韓させた。金正恩氏に直言できる唯一の存在とされる金与正氏の派遣は、南北関係70年の歴史でも破格だ。南北首脳会談の用意があるとの金正恩(キムジョンウン)氏のメッセージを伝えることも予想される。

 だが、こうした北朝鮮のたたみかけるような韓国への融和攻勢には、大きな落とし穴が隠されている。国際社会は北朝鮮に「後戻りできない非核化」を求めているが、北朝鮮は韓国に「後戻りできない関係改善」を迫っているのだ。圧力と対話で非核化を促すアプローチを切り崩すためだ。

 対話以外に選択肢のない状況に韓国を追い込み、米国からの軍事的圧力の防波堤とし、さらには制裁圧力を骨抜きにする安全弁として韓国を位置付けている可能性がある。既に五輪の特例として、北朝鮮船舶が韓国に入港、制裁対象の高官も訪韓した。関係改善を名目にした特例の常態化は避けなければならない。

 文大統領は開会式を前に安倍晋三首相、ペンス米副大統領と相次いで会談した。文大統領にとって、必ずしも居心地の良いものではなかったかもしれない。日米は北朝鮮への最大限の圧力強化を迫り、安倍首相は慰安婦合意の履行を強く迫った。日米との温度差を解消する外交手腕が、南北関係の改善に劣らず必要なことを文大統領は認識すべきだろう。

 一方で、日米も五輪後に朝鮮半島で誰も望まない事態が起きないようにするため、北朝鮮代表団との接触を試みるべきだ。「対話のための対話は意味がない」と突き放しているだけでは、事態打開は難しい。金正恩氏に直結する対話ルートを確保しておくことは、偶発的衝突を避けるためにも必要だ。(共同通信・磐村和哉)

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