平昌冬季五輪は9日に開幕し、25日まで7競技102種目が行われる。参加国・地域は冬季五輪最多の92に上る。冬季スポーツの世界への広がりを示すといえそうだ。

 平昌大会は、2020年東京夏季大会、22年北京冬季大会と東アジアで3大会連続開催となる五輪の皮切りである。東京五輪を控える日本にとって、2年後へ弾みを付ける活躍を選手に期待するとともに、五輪の意味を考える契機にしたい。

 しかし韓国で初めて開かれる冬季五輪は、緊張状態が続く北朝鮮情勢を背景に、政治が主役に躍り出て、南北融和がアピールされている。

 北朝鮮が2大会ぶりに冬季五輪に参加し、開会式で06年トリノ冬季大会以来の合同行進を行う。かつて世界卓球選手権などで結成された南北合同チームも、アイスホッケー女子で五輪史上初めて実現した。北朝鮮は金正恩・朝鮮労働党委員長の妹の金与正氏、党序列2位の金永南・最高人民会議常任委員長ら高官を開会式に派遣する。

 これを端緒に緊張緩和が進めば、平和運動としての五輪の存在価値が認められよう。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は「朝鮮半島に明るい未来への扉を開く」と祝意を述べた。

 だが、表の融和の動きは、演出感が強い。核実験とミサイル開発をやめない北朝鮮と、その政策を放棄させるため経済的圧力をかける日米韓などの包囲網。韓国の文在寅大統領による北朝鮮の参加支援や合同チーム提案を黙殺していた北朝鮮は、今年年頭に金正恩氏が突然、派遣を表明した。包囲網打破へ、韓国の軟化を促す意図が透ける。

 8日には北朝鮮が人民軍創設記念日をこの日に移して軍事パレードを行った。衣の下のよろいを隠さない。一方、北朝鮮が嫌っていた米韓合同軍事演習は、3月のパラリンピック後、4月に実施の予定だ。五輪・パラリンピック期間中は和平ムードが醸し出されても、終了後も融和が続く保証はどこにもないのが現実である。

 一方、スポーツの現場はトラブルが絶えない。前回ソチ冬季五輪でのロシアのドーピング問題は、潔白と認定された選手だけが個人資格の「ロシアからの五輪選手」として参加が認められた。だが永久追放処分を受けた選手などがスポーツ仲裁裁判所(CAS)に訴え、一部が決定を覆すことに成功。混乱は開幕直前まで続きそうだ。これとは別に、スキー距離の選手にも大量のドーピング疑惑が噴出している。

 また、フィギュアスケートは日中、スピードスケートは夜間と、通常の日程と異なるスケジュールが組まれた。欧米のテレビにマッチする時間帯で、そこに「アスリート・ファースト」の方向性を読むのは困難だ。

 政治と薬物などに翻弄(ほんろう)される。だが、せめて今日からは選手に目を注ごう。五輪の主役は政治ではなく、4年間の努力を懸ける選手なのだから。

 日本は複数の金メダルを目指す。フィギュアスケートの羽生結弦選手は男子で66年ぶりとなる2連覇に挑む。スピードスケート女子500メートルの小平奈緒選手、ジャンプ女子の高梨沙羅選手はソチの雪辱を懸けた舞台だ。

 雪と氷の精鋭たちはフェアに戦い、他国への理解と友情を育んでほしい。平和にかかわるツールとして、五輪の意義はそこにある。(共同通信・小沢剛)

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