先日、佐賀県内の山間に暮らす友人と話す機会があった。彼の周辺では空き家が増え、条件の良くない農地の耕作放棄が目立って増えているという。「あと10年もたてば…」と地域社会の崩壊を心配している。

 高齢者が多く、耕作を委託しようにも引き受け手が見つからず困っているといった話は引きも切らない。地域を代表する祭りさえ、いつまで続けられるか分からないという状況だ。

 50代の彼自身は地域に根ざし、活性化しようとずっと尽力してきた。「暗いことばかり言っても仕方がない。楽しみながら自分のやるべきことをやる」と前を向くが、その背中は以前会ったときより少し疲れているように見えた。

 1月30日付の本紙は総務省の2017年人口移動報告に基づき東京一極集中が続いていることを報じた。九州では福岡を除く6県が転出超過で、佐賀県は2千人以上の転出超過。地方が少子高齢化に加えて、東京への一極集中によってじわじわ活力を失っていっていることをうかがわせる。

 その東京では、人口ボリュームの大きい団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」がとりわけ取りざたされている。今後、介護の需要が激増するとみられているのだ。

 こうしたことを踏まえ、県内のある自治体幹部は「介護する人材が不足するため、これまで以上に地方の新卒者らが東京へ吸い取られる」と警戒し、「今後、仮に労働人口の減少などによって納税者が減り国の財政が厳しくなったときには、予算は都市部へ重点的に配分され、地方がますます厳しくなるのではないか」と懸念している。

 地方は近い将来、財源不足などにより過疎化が進んだ地域の橋や道路、水道、医療、福祉などの社会インフラを維持できなくなる恐れがある。「どうすべきか分からず、具体的な協議が先送りになっている」とあきらめがちに語る市や町の職員もいる。

 政府は地方を活性化しようと地方創生を打ち出したが、先に述べたように東京一極集中は続き、地方からの転出に歯止めがかかっていない。各自治体が効果のある事業を展開しているのか、どこの自治体も似たり寄ったりで結果的に予算のばらまきで終わってしまわないか、徹底した検証や見直しが必要だろう。

 政府が鳴り物入りで打ち上げた中央省庁や民間企業の本社機能移転は、いずれも大きな成果は上げていない。また、東京23区にある大学の定員増を10年間禁止する方針も示しているが、必要なのは国家的長期ビジョンに基づく、もっと大がかりな国家戦略であって、小手先の単発的な政策ではいかにも力不足である。

 安倍首相は人口減少を「国難」とするが、地方に暮らす私たちにとっては、地方の衰退も国難である。開会中の国会では人口減とそれに伴う地方の疲弊、その対策についてさらに突っ込んだ論戦を展開するべきである。

 関係省庁を横断する機関などを設置して対処法を模索することも必要だろう。国の責任として、人口減対策がうまく行って地方にも明るい希望が持てる時代が来るという、具体的なビジョンと道筋を示してほしい。(高井誠)

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