釣り人にとって、魚が餌に食いついた瞬間、いわゆる「当たり」の感触は格別らしい。そこから釣り上げるまでが、腕の見せどころである。北方領土最大の企業「ギドロストロイ」社のトップに昨秋、サハリン州(旧樺太)ユジノサハリンスクで会った◆領土問題はいったん棚上げして、まずは経済開発を進めようという「共同経済活動」をどう受け止めているか、その感触を探るためだった。共同経済活動は、いわば日本側の“まき餌”であり、その先には北方領土返還という獲物を見据える◆択捉島で創業し、建設業や水産業を展開する巨大企業。いかにもたたき上げといったイメージのトップからは「湧き水を日本向けにペットボトルで売り出そう」「一緒にホテルを造ってはどうか」と、アイデアがポンポン飛び出す。「いくつも提案したのに、日本から何の反応もない」と肩をすくめさえした◆この企業が共同経済活動を阻むハードルと目されていただけに「これほど前向きとは」と内心驚いた。が、ドル箱の養殖業に話が及んで本音が透けた。「日本は誰もやっていないベニマスなどの魚種を…」。既得権益を手放す気はさらさらない◆北方領土という獲物を釣り上げたい日本と、経済支援だけの「食い逃げ」を狙うロシア。ぎりぎりの駆け引きが続く。きょうは「北方領土の日」。(史)

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