九州農政局長賞に選ばれた安東浩太郎さん・美由紀さん夫妻。耕作放棄地でアスパラを栽培し、新規就農者の育成にも力を入れる=藤津郡太良町

最先端の環境制御技術を駆使して県内トップクラスの収量を上げるキュウリ農家の中山道徳さん。「NHK佐賀放送局長賞」は、梨農家の兄裕介さんも4年前に受賞している=伊万里市

 意欲的に技術や経営の改善に取り組み、地域農業の振興に貢献している個人・団体を表彰する「佐賀農業賞」。受賞した16の個人、団体のうち、「若い農業経営者」部門の最優秀賞と特別賞受賞者の取り組みを紹介する。

■最優秀・九州農政局長賞

高品質のブランド人気

アスパラ農家 安東浩太郎さん・美由紀さん(太良町)

 有明海を見下ろす藤津郡太良町の中山間地域。安東浩太郎さん(38)美由紀さん(37)夫妻は脱サラして県外から移住、美由紀さんのふるさとでミカンの廃園を整備し、アスパラガスを栽培する。

 地元竹崎のカニやカキ殻も肥料にした自身のブランドを商標登録。品質の良さが評判を呼んでファンを増やした。今では関東の直販所や福岡の有名レストランでも扱われ、輸出の話も進む。2013年の新規就農から5年。「自分たちで体験し、次にどうするかを考えてきた」と振り返る。

 浩太郎さんは北九州市出身。大学卒業後、関西の不動産会社などで働き、08年に美由紀さんと職場結婚した。就農のきっかけは、もともと興味があったという農業の相談会に参加したこと。やり方次第でビジネスにつなげられる可能性を感じて1年後に会社を辞め、佐賀へ移住。県内の農業法人で2年間学び、太良町で独立の準備を始めた。

 「耕作放棄地で何を作ったら経営がうまくいくかという視点で考えた」。周年栽培が可能で、初期投資が比較的少ないアスパラガスに着目。さまざまな肥料を試しながら高品質の商品開発に努めた。新鮮な状態で消費者に直送するため、輸送コストも抑えられる小サイズの箱を活用している。

 今でこそ順調だが、当初は農地や住居探しなどの壁にもぶつかった。「新規就農者の気持ちに寄り添いながら、より早く、効率的に参入できる仕組みをつくりたい」。農業による地域や産地の活性化に夢を膨らませる。

 

優秀・NHK佐賀放送局長賞

先端技術駆使し収量増

キュウリ農家 中山道徳さん(伊万里市)

 「農業は科学だと思った」。伊万里市のキュウリ農家中山道徳さん(30)は実感を込めて語る。就農して7年目。最先端の環境制御技術を導入して使いこなすことで収量は年々増え、昨年は加温ハウスで県内トップクラスとなる10アール当たり42トンを達成した。

 実家の梨農家は5歳年上の兄が継ぎ、自身は自動車整備士の道に進んだ。23歳の時、キュウリも作っていた父の勧めでハウスを継いだ。周年栽培の忙しさは想像以上だったが、「自分が手を掛けた分だけ反応がある」とやりがいを感じた。

 2015年、県内で試験的に導入されていた環境制御技術を学ぶ機会に恵まれたことが飛躍の転機になった。理想的なキュウリの生育環境に近づけるため、ハウス内外の気温や土の温度、湿度や二酸化炭素の濃度、光の量などを常にモニタリングする。当初は「そこまでしないといけないのか」という思いがあったが、結果は目に見えて表れた。

 「1分1秒を振り返りながら、検証、反省して次に生かしていく。それは人間の感覚だけでは無理。設備を操作しながら、適した条件を探っていくのは本当に奥が深い」

 伊万里市内ではここ数年、若手のキュウリ農家が増え、互いに刺激し合って収量を増やす好循環が生まれている。中山さんも好調な売り上げを背景に、今後の雇用型経営を見据えてハウスを増設予定だ。「産地の発展のために自分もどんどん伸びないといけない。頑張って稼ぎ、子どもたちの農業へのイメージも変えたい」

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