「たくさんの人が咳逆(がいぎゃく)を患い、死者多数」。平安時代の歴史書『三代実録』に、そんな記述がある。貞観(じょうがん)4(862)年のことである。咳逆はシワブキヤミともいい、ひどい咳(せき)のこと。今のインフルエンザだ◆その10年後にも京で発生。巷(ちまた)には渤海(ぼっかい)(中国東北地方の東部に起こった国)の客が外国の毒気をもってきたから、この病がはやるのだという噂(うわさ)が広まったという。インフルエンザが外国から入ってくることを知ったのである(酒井シヅ著『病が語る日本史』)◆インフルエンザが今、全国的に猛威を振るっている。1999年以降、最多の患者数というから困ったものだ。佐賀でも、あちこちマスク姿ばかりである。なにしろ寒い。列島は冷蔵庫の中にすっぽり入ったかのようで、寒さと乾燥でウイルスは感染力を増すから、流行と無関係ではなかろう◆きょうは節分。豆をまき、目には見えない邪気の化身である鬼を追い払う。「鬼は外、福は内」と声を張り、やっかいなウイルスも退散させたいもの。そして、もうあすは立春である。春ほど待たれる季節はないが、歩みは遅々としている◆春隣(はるどなり)、春寒(はるさむ)、余寒(よかん)、花冷え…。そんな言葉があるように、春の到来は小刻みだ。きょうは太い海苔(のり)巻きをがぶりとやって、明るい光を待ちたい。〈立春の日ざしありつつうすれつつ〉稲畑汀子。(章)

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